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悲しい唄を歌おうか

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どうしよう、見られた、んだよね。
何か、言わなきゃ。
だけど、喉がからからに渇いていて、上手く声が出せない。


「お前、何やってんだよ…!?」

がっと強く肩を掴まれた。
思わずびくりと身を竦ませる。
僕を射抜く兄貴の瞳が、怒りやら悲しさやら、様々な物が混ざり合ったような、よく分からない色をしていた。
兄貴が今、何を思っているのか、僕には分からなかった。

「ぁ、にき、」

「言えよ!!何だよ、この金!!」

ぎゅっと握り込んだ手をがっと掴まれて、目の前に突き出される。
紙切れが、はたはたと微風に揺らめいていた。

「…何だって、いいでしょ」

「いいわけないだろ!?お前、何時からこんな事してたんだよ?なぁ?答えろって…ッ!!」

悲痛な叫び声だった。

どうして、そんな苦しそうな顔をしてるの?
兄貴は、僕の事なんてどうでもいい筈なのに。
陽毬さえ居れば、僕なんて居ても居なくても関係ないんでしょ?
だったら、僕が何しようと、僕の勝手じゃないか。
兄貴に文句言われる筋合いなんか、これっぽっちも無い筈だ。

第一、兄貴だって、僕と同じような事してるじゃない。
何で、僕だけそんなに咎められなきゃいけないんだよ。



「晶馬!おい晶馬!何とか言えよ!!」

「…るさい」

「しょ、」

「煩いって言ったんだよ!!」

自分でも吃驚するようながなり声だった。
案の定、兄貴も相当驚いた様で、目を大きく見開いている。
それでも、僕は自分を抑える事が出来なかった。

「もうっ、放してよ…!何しようと、僕の勝手だろ!」

兄貴には関係ない!
その言葉が、兄貴の逆鱗に触れた。
がんっと頬に強い衝撃を受けて、盛大に尻餅をついてしまう。
殴られたんだ、と理解するまでに、暫く時間がかかった。

がっと胸倉を掴まれて、怒りに溢れた兄貴の顔が、眼前に迫る。

「関係ないわけないだろ!?大事な弟が、…愛しいお前がッ、そんな汚い事に手を染めてるって分かって、黙って見過ごせるわけないだろうが!!」


愛しい。
その言葉が、深く胸に突き刺さる。

嬉しいなんて、思っちゃ駄目だ。
所詮、家族愛に留まる程度の薄っぺらいモノなんだから。
期待なんて、とうの昔にくしゃくしゃに丸めて捨てたんだ。


「止めろよ、こんな事…!金なら、俺が何とかするっつってんだろ?だから、なぁ晶馬、もう二度とこんな事しないでくれよ、頼むから…!!」

兄貴が、泣いている。
ぽろぽろと、子供みたいに泣きじゃくって、僕を抱き締める。
息が止まりそうになる程の、温もり。
肩を濡らす、滴。


ねぇ、何で泣いてるの?
僕のために…泣いてくれてるの?


ほら、簡単に希望を抱いちゃうんだから。
単純なのは、兄貴も知ってるでしょ?
なのに、どうして平気でそういう事言うんだよ。

兄貴は、ずるい。
陽毬しか愛せないのに、決して僕を離そうとしないんだから。


ずるい、理不尽、横暴。
どんなに罵っても、やっぱり嫌いになる事なんか出来なくて。

―――もう、嫌だよ。辛いんだよ、冠葉。


助けを求める様に、兄貴の背に腕を回す。
じんじんと疼く頬に夜風が沁みて、涙が零れそうになった。
作品名:悲しい唄を歌おうか 作家名:arit