二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【T&B】ゲット・バック・ホーム

INDEX|4ページ/4ページ|

前のページ
 

その4



二週間ぶりの我が家にバーナビーが帰ると、そこは桃源郷と化していた。
「おかえりなさい、マスター」
「パーフェクティユーフォリア…」
 HK-00を送りこんだのは実験も兼ねた気まぐれだったのだが、やはりもっと早く帰るべきだった。同じ顔が二つも同時に存在しているなんて、楽園すぎる。リビングに入ってから目にした光景に、思わず感嘆の声が出てしまった。膝枕なんて、意外に仲良くやっていたようで微笑ましい。締まらない口元を押さえながらまじまじと同じ顔の二人を眺めていたら、HK-00がこてりと首を傾げた。
「マスター?」
「あぁ、ごくろうさま。スリープ機能だけで1週間もちましたね」
「身体が重い」
 どこか気だるげな表情で不調を訴えるのを見ると、“もった”というだけで活動するには少し厳しかったのかもしれない。充電の間隔は調整が必要か、と脳内メモしてバーナビーはHK-00の首筋に手を伸ばす。
「装置を持ってきたので完全充電できます。しばらく休みなさい」
「……はい」
 首裏の隠しボタンを押して人工皮膚を開くと、HK-00電源をオフにする。途端ずるりと寄りかかって来る重みに耐えながら、バーナビーはなんとかソファに横たえさせる。人に近い外見に惑わされてしまうが、見た目の倍の重みはあるのだ。ふぅ、と小さくバーナビーが息をつくと、HK-00の膝で寝ていた虎徹が身じろぐ気配に振りかえる。
「……帰ったか」
「すみません、起こし…っ」
 目元を擦る虎徹の仕草に気を取られていたら、腕を引かれた事に咄嗟に反応出来ずバーナビーは虎徹の上に伸しかかる格好になってしまった。腰に手が回るのと唇を塞がれるのがほぼ同時くらいで、ほんのりと感じるアルコールの味になるほどと頭の隅で納得する。口づけを深くしても逃げずにしっかりと舌を絡ませてきて、積極的な虎徹に興奮でぞくりと背筋が泡立った。
「…っは」
 唇を離して息を継ぐと、いつの間にか眼鏡が外されていたことに気づく。至近距離でもぼんやりしてしまう視界の虎徹が不敵に笑った気がして、頬を撫でていく手の感触にびくりと反応してしまう。わさりと髪の感触を楽しむように暫く動いていた手に力が籠って、また引き寄せられるとキスが再開される。寝ていたままだったら、起きなかったら、かわいいキスだけで我慢しようと思っていたのに。虎徹の熱烈なキスに応えながら、バーナビーは耐えるのをさっさと諦めた。

*****

 前夜に性行為をしようがしまいが、虎徹より早く起きるというのは稀だった。だからそんな朝は、珍しい彼の寝顔をまじまじと見つめるのが楽しみになっていた。赤く染まった目元を軽く撫でて、薄く開いた唇にキスを落とす。昨夜言いそびれたただいまを告げて、まだ静かな寝息に安堵する。すごく、だらしない顔をしている自覚があった。
 バーナビーは静かにベッドを抜け出すと、リビングのソファに放置してしまったHK-00の元へ向かう。昨夜はベッドじゃないと嫌だという虎徹に従って移動したから、ソファにはバーナビーの上着が落ちているだけだった。床に置いていたケースから充電機と専用のコードを取りだすと、HK-00の首裏に繋ぐ。完全充電には8時間を要するから再起動出来るのは夕方か、と時計を見上げながら算段していると、突然背中に重みがのしかかって、バーナビーは驚いた。
「トラ、寝てんの?」
「充電しているところですよ」
 平静を装って答えるけれど、抱きつかれて近い距離にどきどきして、虎徹の掠れた声にもいちいち反応してしまう。朝から何を、とこっそり息を整えながら、バーナビーは虎徹の言葉を反芻する。
「“とら”って?」
「あぁ、こいつの名前。えいちけーなんたらなんて呼びにくいし、勝手に付けちった」
「はぁ…別に構いませんが」
「暫く起きねーの?」
「えぇ。充電完了には8時間掛かりますから」
「ふーん」
「あの、虎徹さん」
「ん?」
 抱きつかれるのは嬉しいけれど、そろそろ離れませんか、とか耳元で喋るの止めませんか、とか控え目に視線で訴えてみるが控えめすぎて気づいてもらえず、ぎゅう、と抱きつく強さが増しただけだった。だからこれは、朝から何かの罰なのか。
「そんじゃ朝は俺が作るか。何食いたい?」
 トラに料理教えてもらったんだぜ、と得意げに話す虎徹に心身共に身動きが取れないバーナビーが咄嗟にできたリクエストは炒飯で、なんだよと拗ねられたけれど分かったと嬉しそうに笑って頬にキスされて、思考が止まる。
「…っ」
 鼻歌を歌いながらキッチンへ向かった虎徹にやっと解放されたバーナビーは、未だ激しい動悸が治まらなくて顔も熱くて、炒飯が出来上がる頃に治まるだろうかと幸せなため息をついた。