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その3



朝昼晩の健康的な食事と、掃除の行き届いた綺麗な部屋。酒を引っ掛けて帰ったら小言を言うのを除けば、トラは完璧な嫁もとい家政夫だった。先週体感した一週間の長さが嘘の様に今週はあっという間に過ぎて、単に人恋しいだけだったのかと単純な自分に呆れる。けれど焦れる心は確かにあって、声が聞きたいとか姿だけでもなんて、未だ帰らぬ同居人に思いのほか浸食されていたようで、苦しさと悔しさがせめぎ合う。トラがやって来た時は勢いで呼び出してしまったが、元々まめに連絡し合う事は無かったから、今更不自然すぎるかとバーナビーの番号を呼び出しては通話ボタンを押せずにいた。
「……」
 今日も今日とて数分葛藤したのち、結局携帯電話を上着のポケットにしまうと虎徹は家の扉を開けた。

「コテツ、これ以上アルコールを摂取すると明日に支障が出る」
「だーいじょうぶだって」
 風呂上り、なんとなく物足りなくてひと缶だけと冷蔵庫からビールをくすねてソファに座ると、開ける直前にトラに実力行使されてしまった。確かに夕飯の時も飲んだけど。ぎぎぎ、と大人げなく二人で取りあっていた缶が、握りすぎてべこりとへこんだ。
「昨日の朝はアルコールが残っていたようだが」
「……う」
 余計なことばっかり覚えてるな、と虎徹はトラを一瞥するとため息をついて諦めた。腹いせに隣に座るトラの膝上にダイブしてやる。アンドロイドとはいえ外見から予想出来た通り男の筋肉質な感触で、特に気持良くもなく。しぶしぶ起き上がろうとしたら不意に頭を撫でられて、虎徹は動きを止めてしまった。
「やはり私では、マスターの代わりにはならないか?」
「……代わりもなにも、バニーはバニー、トラはトラだろ」
 唐突な質問に、一瞬胸の内を見透かされたのかと焦る。すぐさま大人の顔を取り繕ってトラの頭を撫でてやったら、いつぞやは拒否したのに今日は大人しくされるがままだった。
「では、私がマスターの見た目をしていたら?」
「襲ってたかもなぁ…なーんて」
「私にセックス機能は付いていない」
「冗談だって!」
 どこまでも真剣なトラのボケにつっこんでから、実際にトラがバーナビーの顔をしたアンドロイドだったらきついだろうなとぼんやり想像してしまった。似ているのに本人じゃないなんて。ぎゅ、と目を瞑って虎徹は妄想を振り払う。さらりと触れてくるトラの手は優しくて、つい本音がぽつりと漏れてしまった。
「……同棲なんてしなきゃよかった」
「何故」
「期待するだろ。帰って来るって分かってると」
 程よい酩酊感と頭を撫でる感触に絆されて、留めておくべき弱い言葉がするすると出てくる。
「それに、いつも一緒にいたいから同じ家に住んでんのに、一緒にいられないんじゃ…いみ、ない」
「コテツ?」
「……撫でて、て」
 ふと動きの止まったトラの手を掴んでねだる。やってきた睡魔に逆らう気力はおきなくて、だんだんと身体の力が抜けていく。その後に、何を口走ったかは覚えていなかった。
「はやく…かえってこい…ばかうさぎ」