ルック・湊(ルク主)
別離
無事戴冠式も終わりその後のパーティと言う名の宴会も終わると、この地を離れる者はどんどん増えていった。
また、会いにくるよ、と湊に笑顔でいいながら。
「ルックも、もう行っちゃうの?」
「・・・そう全面的に寂しいと表現されると僕も困るんだけど・・・。またたびたび来るから。」
「・・・ん。」
ルックは寂しげに微笑んだ湊を抱きしめ、そっとキスをした。湊はそれを受け、抱きしめ返す。
「あら、ごめん、お邪魔だったねー?」
そこに詩遠の声がしてルックと湊はガバッと離れる。恋人とのいちゃつきを見られた湊は真っ赤になって傍にあった柱にとっさに隠れた。
「・・・邪魔だと分かってんならこないでよ、ヤボだろ。」
「わざとじゃないよ?たまたまじゃない。ごめんねー?湊。ほら、おいでー?」
ルック的にあからさまに胡散臭い、だがさわやかな笑みを浮かべて、詩遠は柱の陰に隠れている湊に手招きした。湊はおずおずと出てきた。
「・・・詩遠さん。」
「ん。とりあえず俺も帰るけど、しばらくの間はね、俺は頻繁にここに来るからいつでも待っててね?」
「は、はい!いつでも待ってる!」
なんだその恋人同士みたいなセリフは、とルックはイラっとした。だが次の瞬間さらにイラつきが頂点に達する。
「じゃあね。」
詩遠がニッコリと言ったかと思うと、かがんで湊に軽くキスをした。湊は赤くなったものの、ニッコリするだけ。
「って湊!?君まだもしかしてこいつのこの所業、挨拶だとっ!?ていうか何してくれてんだこのろくでなしが!!」
ガバッと湊をかばうように抱きよせ、ルックは詩遠をにらんだ。
「やだ、ルッくんたら怖いー。」
「ふざけてるんじゃないよ!このエセ英雄!」
「って、挨拶じゃないの・・・?」
ルックが、相変わらずのほほんとしている詩遠に噛みつくような態度を見せていると、湊が不思議そうに、そして困ったように言った。
「・・・ふふ。ほんと可愛いねえ。大丈夫、湊。挨拶だよー?」
「っく。・・・ああ・・・、挨拶だ・・・。挨拶だとも!っ挨拶だけど金輪際そんな挨拶は絶対、本気で、間違いなく、するな、そして湊も逃げていいから!」
「??」
「じゃあとりあえずさー、送ってってよ、ルッきゅん。」
詩遠が今までのやりとりが何事もなかったかのようにニッコリ笑顔でルックに言う。
「は?じゃあって何?なんで僕が。」
「だってビッキー、またパーティー中に消えちゃったし。」
「いや、それ答えになってるようで、なってないよね!?なんで、この僕が、君を送らないといけないんだ、と言ってるんだけど?」
「えー?いいじゃん、これからはそういう事もなくなっちゃうし、寂しいじゃないー。」
「っだから、ていうか気持ち悪い・・・!!」
「ルック、送っていってあげてよー。ねー?」
ルックと詩遠の微妙なやりとりを見ていた湊がルックの袖の裾を引っ張りつつ言った。
・・・ていうか何その言い方。上目遣いでおずおずとおねだり!?ルックは赤くなりつつ“わ、分かったよ・・・”とつい言ってしまった。
「・・・むっつり・・・。」
「っ何か言った!?」
「いやー?じゃあ、出口で待ってるから、ちゃんと来てねー?じゃあね、また、湊。」
詩遠は湊がおもわずドキドキしてしまうような良い笑顔を見せると、手をあげて去って行った。
「っまったく・・・。何なんだ・・・。」
「でも、ちゃんとこうして僕とルックのお別れの時間、また作ってくれたよ?」
ルックが湊を見ると、湊はあのルックが大好きな笑顔を向けてくれていた。
「ルック・・・。何かあったら絶対僕を頼ってね!?」
「いや・・・それは僕のセリフ・・・。」
力いっぱいに言ってきた湊に、ルックは苦笑いをして答えた。
「そんな事ないよ!僕だってルックを守れるんだからね!?」
「・・・ああ。・・・知ってる。」
ルックは湊がびっくりするくらい優しげな笑みを浮かべた。湊は真っ赤になってそんなルックを見つめた。
「・・・?何?」
「う、ううん!ほんとに、ね?僕じゃ頼りないかもしれないけど・・・なんでも、話して、ね?」
「・・・ああ。・・・でも湊は全然頼りなくないよ・・・。本当に頼りがいのあるリーダーだったし、これからもそうだと思う。」
「・・・えへ、ありがとう・・・。・・・もう、行く?」
「・・・ん。」
「大好き。ルック。ずっと。」
そう言ってルックの両頬に手をそえ、そっと自分の方に引き寄せてキスをしてきた。
そんな湊が愛おしくて、ルックはキスをしたままギュッと湊を抱きしめた。
「僕も・・・。湊・・・きっと・・・今後何があっても・・・ずっと・・・大好きだ・・・。」
「仲良くお別れしてきたー?」
「・・・うるさい。」
「ふふ。ちゃんと会いに行ってやりなねー?引きこもってたらダメだからね?」
「・・・ニートのあんたに言われたくないよ。」
「言うねー?でもほんと、お前は湊のそばで色々見たり経験したりするのがいいと思うよ?まぁ余計なお世話だけどね?」
「・・・・・・ほんと、余計なお世話・・・。」
ルックは軽くため息をつくと、ロッドをふった。そしてルックも詩遠もいなくなった。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ