ルック・湊(ルク主)
「ルック様。準備は整いました。すぐにでも出発出来ます。」
「・・・少し待ってくれるかい・・・。」
セラが戻るとルックはテーブルにつき、何やら思いつめたような表情をしていた。
「考え事ですか?ルック様。」
「ああ・・・。・・・セラ。時の流れの到達する場所、世界の終焉は、君には見えるかい?」
「私に宿る力は、そのような大きなものではありませんので・・・。ルック様には、それが見えるのですか?」
「見える・・・というよりも、真なる風の紋章が覚えている、そういう事かな・・・。」
「それは?」
「世界の究極の結末は大いなる戦いなんだ。法の力と混沌の力がその決着をつける最終戦争。そこに、人の生きる場所はない。それが、定められた未来。それに逆らう事は・・・バランス・・・世界を統べる天秤と人との戦いだ。それは神への挑戦。そして人は運命に逆らえない。・・・それが真なる風の紋章の知っている、いや、望んでいる結末だよ。」
「・・・未来を覚えている、とは?」
「この世界は、幾百万と存在する世界の一つにすぎない。そして、こんな戦いは何百、何千回と繰り返されてきたものなんだろう・・・。」
「・・・・・・。」
「でも・・・僕は・・・」
「・・・ルック様は、未来を・・・運命を変えることを望んでいるのですね。」
「それは・・・人に・・・許されない行為なのかもしれない・・・。百万の人の命を奪う事になってもそれを望むのは、許されない事なのかもしれない・・・。・・・・・・究極の死を知りながら・・・世界の死を知りながらも・・・僕には、まだ勇気がない・・・。」
「ルック様。ルック様がそれを望み・・・それを行うなら、このセラは付き従うだけです。百万の命にセラの命を加えて下さってかまわないのですよ。」
「僕の命も・・・その一つさ・・・。」
「それならば、私には何の不安も、何の心配もありません。信じる道なら進むのでしょう。それは人の性なのですから。」
「・・・ありがとう・・・セラ。」
するとふいにどこからか声が聞こえた。
「ふーん。そうなんだ?」
「セラにはそうやって大切な事言うんだ!!僕にだけ何も言ってくれない!!」
「・・・・・・え?」
ルックはガタン、と椅子から立ちあがった。今の声は・・・?
「申し訳ありません、ルック様。さきほどこちらに戻る際にお会いしまして・・・。そしてお願いされましたので。」
「え?」
ルックがポカン、としているとセラがロッドを振った。すると窓の近くに人がいるのに気付いた。今までそこにいたのをセラの魔術で分からないようにされていたの、か・・・?
「お久ー。」
懐かしいうそくさい笑みをうかべ、今までの重いはずの話を聞いていたとは思えない様子で、かの英雄がヒラヒラと手を振る。そして・・・。
「バカ!ルックのバカ!バカルック!!バカバカバカーーーーーッ。」
これまた今の話を聞いていたのか・・・?と首をかしげたくなる様子でしかも、ものすごい勢いで飛びついてこられ、茫然としていたルックは思わずせき込んだ。
「っごほっ・・・み・・・みな、と・・・?」
「会いたかったっ!!」
そしてルックが心から切望していたあの笑みをうかべ、湊はルックに抱きついた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ