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まさか王国軍か何か・・・？と思っていると、女の子のキャアキャア叫ぶ声が聞こえてきた。
・・・方向といい、女の子の声ばかりといい・・・え、まさ、か・・・？３人は思い当たることしかなく、顔を青ざめさせた。
湊が駆けだす。ルックとフッチもあとに続いた。後ろでは、先生の止める声と、周りで怖がったりびっくりしたりしている声が聞こえる。
廊下に出ると向こうのほうから煙が出ているのが見えた。そちらの方から女子生徒も逃げてきている。
とりあえずここまで逃げている子は大丈夫だろう、と湊達は煙が出ている方へ走っていく。
果たして、そこは３人が想像した通り、調理室であった。

「大丈夫ですか！？怪我した人とか、いますか！？」

湊がそう叫びながら入って行く。

「ルック、ここの煙、風でどうにかなる！？」
「・・・分かった。」

ルックは小さな呪文を唱えるとロッドをかざした。静かな風が発生した。
湊は一目散に窓に向かい、開け放ったので、ルックはそこに風を誘導する。換気扇や電気をつけるといった危険な行動をとらずにまず窓を開ける辺り、やはり自分ではバカだとか言っているがしっかりしているとルックは思う。
ルックの風のおかげで黒く煙った空気はあっというまになくなっていった。
湊達は中にいる人達の様子をうかがってまわる。とりあえず怪我人や気分の悪くなった人はいないようだが、大事を取って保健室に向かうよう指示した。
先生を見つけ、具合が悪いわけではなさそうなので事情を聞く。

「私にもよくわからないのよ。実習をしていたらいきなりどこからか爆発して・・・」
「・・・そう、です、か・・・すみません。」
「あら、なぜあなたが謝るの？逆にこちらはお礼を言いたいのに。ほんとうにありがとう。」

そう言って頭をさげてくる先生に、慌てて湊は言った。

「い、いえっ、お、お礼なんてっ。ほんとにっ。」

そこにルックが助け船を出すように言う。

「先生。とりあえずあなたも念のために保健室に行ったら？」
「ああ、わたしは大丈夫なんだけど・・・ええ、でもそうね、行ってきます。あなたがたも危険ですので、ここからは離れてて下さいね。」

ようやく先生も出ていくと、湊がなんともいえないすごみのある笑みをうかべ、どこを見るでもなく言った。

「ナナミ。どこ？」
「あ、あは。いるの、分かっちゃった？」

調理実習台のすみから罰の悪そうな顔をしたナナミと困ったような表情のアイリが出てきた。

「・・・ナナミ・・・。あれほど、いつも、変なものを入れるなって、僕、言ってるよね？」
「だってもうちょっと何かをいれたほうが絶対美味しくなると思ったんだよー。」
「・・・前もそういって、城の調理場爆発させてハイ・ヨー泣かせてたよね？」
「・・・うん。」
「・・・しばらくナナミは料理禁止。分かった？」
「えー・・・う・・・はい・・・分かりました・・・。」

よっぽど不遜な笑みを浮かべている湊が怖かったのか、爆発させた事にそうとう反省しているのか、拍子抜けするくらい素直にナナミが認めた。
ルックも少し唖然と湊を見る。
え、この子、誰、くらいな勢いで。
ほんと色んな表情が出てくる。・・・飽きない・・・。

結局爆発の件は裏でフィッチャーが動いてくれたようで、目立つ事にはならなかった。
フィッチャー、何気に優秀。
その翌々日の夜。

「ねえ、ねえ、ねえ、今日の晩御飯は何だと思う？楽しみだねー。私も秘訣を教えてもらおうかしら。」
「そうしたほうがいいかもね。」
「湊も、そう思う？」

ナナミがニッコリと言った後でふと考えるような表情になる。

「・・・・・・・・・・・。ん？なんか含みがあるんじゃ？？」
「そう？」

ニッコリと返した湊を、ルックは呆れたように見ていた。