ルック・湊(ルク主)
喚起番外編後篇
「はあー綺麗な先生だったよね。」
授業が終わると、湊がため息越しに言う。
「綺麗ってゆうか・・・なんてゆうか・・・さらに増してたような気がします。」
フッチが困ったような感じで言った。ああ、一応ちゃんと覚えてたんだ、前に一緒に戦ってたと・・・ルックは頬杖をつきながら思っていた。
「僕なんかドキドキして授業どころじゃなかったよ。」
「湊さんは、ああいった感じの女性がタイプなんですか?」
フッチがニッコリと聞いた。何気にルックは耳に神経を集中させる。
「え?うーん。さすがにジーン先生は大人っぽすぎるよ。ほんとうに素敵だとは思うけど。」
まあ、そりゃあそうだろうね。
「じゃあ誰がタイプなんですか?」
フッチ、グッジョブ。ルックは関係ないような顔で頬杖をついているが、内心でそう思い、その後でなんでだよ、自分・・・と突っ込んでいた。
「ええ?うーん。みんな素敵だとは思うけどねー。誰、となると、あはは、思いつかないよ。」
そうなんですかー、とあいかわらずニコニコしているフッチを見ながら、ルックも、ふーん、などと思っていた。
て、なんでこの僕がそんな事気にしなきゃいけないんだよ。
まあ、子猿だからね。そんな事もきっとまだ分からないんだろうよ。うん。
次の授業は歴史だった。
「で、イシュヴァーク族の長バラドが統一をかかげて挙兵、ファレナも東部の安定を望んていた為支援し、十数年にわたる戦乱ののちバラドは他の部族を下し、建国の王となったわけです。だが国名を「アーメス新王国」と定めた事でファレナとの関係を悪化させました。」
先生がだらだらと太陽暦140年ころの歴史について話している。湊は聞いた事のない事ばかりでさっぱりだった。
・・・本、読んでないもんね、この子。
そんな湊の様子を見ながら、ルックは思っていた。
「なぜファレナの心象を悪くしたか、というと、もともと古代アーメス王朝は、現在のファレナ女王国、アーメス新王国、ナガール教主国の全域を領土として繁栄していた超巨大王国だったんですけどもね。なぜかこの王国は滅んでしまいました。ただ太陽の紋章の恵みで栄えていた王国だったため、今も太陽の紋章を所有するファレナがアーメス王朝の末裔だといわれています。そんな折にまったくかかわりのない東部部族が「アーメス」を騙った為だと言われています。」
ふあぁぁ、と思わず湊は大きなあくびをした。先生がジロリ、とこちらを見る。
首をすくめている湊を見てから、ルックはおもむろに手をあげて言った。
「先生。なぜか、じゃないんじゃないの?太陽の紋章を所有していた王の乱心により太陽の紋章が暴走し、それによって王国は一夜にして滅び去ったと言われてるんだけど?その辺は文献により、いいつたえとはいえ、確かな話だと思われるよ。」
つまらなそうにルックは言う。先生は焦ったように、ああ、ともうむ、ともとれないような音を発して“そ、そうだったかな”などと言っていた。
「ルックってすごいねっ!」
歴史の授業が終わった後、湊が目をキラキラさせながら言った。
「別に・・・たいした事じゃない・・・。」
「えーたいした事だよっ!ねえ、フッチ!」
「はい。すごいですね。さすが島にこもっているだけはあります。」
こいつ。
ルックはニコニコとしているフッチを見た。なんとなく湊絡みだと僕に対してたまにトゲを感じられるのはなぜだ。
「・・・まあ、本だけはたくさん読んではいるからね・・・。」
「えーそれだけでもすごいよっ。僕全然読んでないもん。」
対して湊は無邪気に感嘆していた。
次の授業は鍛冶。
「て、そんな授業まであるんだ・・・。」
ルックはため息まじりで言った。
「うーん、僕も別に鍛冶職人になるつもりはないしねー。」
湊も笑いながら言った。
「あ、でもさ、さっき先生と話してたんだけど、この先生、もともとは彫刻芸術家さんなんだって!今度ここが落ち着いたら城に誘ってみようかなぁ。」
「・・・なんで?」
「え?ルックがいつも立っている石板の上さー、ちょっと寂しいじゃん。エレベーターがあるフロア。あそこになんか彫刻かざってもらおうかなーって。」
エヘ、と聞こえてきそうな感じで湊が言った。・・・彫刻、ねえ。
その時教室の外から爆発音が聞こえた。
瞬間ゆるんでいた湊の顔が引き締まる。その辺はさすがだ、とルックも常々思っていた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ