ルック・湊(ルク主)
「・・・て。なんでさっきから敵出たら逃げるわけ!?」
少し息をきらしながらルックは言った。あの後平原を歩いていたら、先ほどから、逃げてばかり。この辺はどうやらしょぼい敵ばかりだから簡単に逃げられるけども。
まさか、こんな敵ですら倒せないようなレベルの子じゃないだろうな・・・?
「んー?えっとね、まぁちょっと鍛えてるだけだよ。ルックもさ、どうやら魔導士で体力ないみたいだし、ついでに鍛えられて一石二鳥じゃん。」
「はぁ?何でこの僕がそんなことしないといけない訳?冗談じゃないよ。これ以上走らされるなら、僕は帰るからね。」
そう突き放すように答えると、湊は“えー”とかなんとか言いながらも分かった、と了解した。
後日、なぜ逃げてばかりいたのか判明したが。どうやら逃げ足を速めてかけっこの練習をしていたようである。そしてその成果のおかげでスタリオンというエルフを仲間にしていた。
そして、そうこう言ってるうちにラタドにつく。
「この間知り合った探偵さんをね、仲間に誘おうと思って。」
そしてその探偵とやらがいるところに向かい、見事に玉砕していた。
ただ単にコインの裏表を当てたら仲間になる、というだけなのだが、ちっとも当たらない。
「絶対何か裏があるはずなんだよねー・・・。」
湊はそう言いつつも、とりあえず飯店に向かう。そしてそこでとある男性にその探偵を仲間にする方法を聞いた。
どうやらイカサマらしく、コインに細工をしてあるらしい。
その男は、このコインを使ってくれって言うといいよ、と親切にも湊に普通のコインを渡していた。
「よーし、これでもうばっちりだよ。あ、ルックはちょっとここで待ってて。疲れてるみたいだし、何か飲んでゆっくりしててよ。」
ニッコリと言うと、ルックの返事も待たずに出て行ってしまった。
「ったく。」
ルックはため息をつきつつ、とりあえずお茶を頼み、しばらく座って飲んでいた。
だがあの小さな子猿を一人でうろつかせていいものか・・・?何かあってはレックナート様に面目がたたないし、な。
ルックはまたため息をついて立ち上がった。
先ほどの場所に行くと、もう仲間にした後なのか、誰もいなかった。
どこに行ったんだ、とあたりを見回すと、向こうの方に赤い服が見えた。
近づこうとすると、ふと風が会話を運んできた。
「へえ、なかなか上玉だな、金目のモンがなくても楽しめそうだ、おい、ちょっとこっち、こいよ」
どうやらチンピラに絡まれているらしい。スッと路地裏に消えていく湊と男を慌てて追う。
「まったく世話の焼けるっ・・・て、ん・・・?」
2人が入っていった路地裏に入ると、あどけなさの残った湊が平然と自分の身体の2倍以上あろうかという男の首元を締め上げ、しかも手だけで持ち上げていた。
「これにこりたら、もう二度と誰にもこんな事しないでねー。またこんな事やってるの、次見つけたら、ただじゃおかないから。」
「ぐっは・・・わ・・・分かっ・・・」
「よし、じゃあこれはもらっとくからねー。バイバイ。」
ドサッと落とせば男は喉を押さえてせき込んでいた。湊はニッコリとして踵を返したところでルックを見た。
「あ、ルック。」
「あ、じゃないよ。何してるのさ。」
「えー?だってさっきのおじさんが僕の金目のものとともに、ろくでもない事しようと企んでそうだったから、ちょっと、ね?」
歩きながら、湊はニッコリとした。
「僕、けっこう力持ちなんだよ?」
「・・・それはよく分かったよ。」
「うん。あ、臨時収入が入ったから、なんか美味しいもの、食べて帰る?」
「!?」
あなどれない。
ルックは実感した。
ただのひ弱そうな、小さな少年だとばかり思っていたが・・・。
けっこうしっかり、そしてちゃっかりしている。そして何気にいい性格をしている。
それは、その後サウスウィンドウにて、発明家とやらの偏屈じいさんの家でさらに実感した。
・・・普通、封印球、笑顔で投げるか・・・?
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ