ルック・湊(ルク主)
理解
その後、湊は城下町で会った、男、フィッチャーの話により、トゥーリバー市にやってきた。
湊はルックを当然のようにメンバーに入れる。無愛想だが、なんとなく、歳も割合近そうなこの少年を気に入っているのか、パーティにはよく入れていた。
「あんな無愛想な奴、よく気が合うな。」
誰かにそう言われたこともある。
気が合う。
僕は合うと思いたいけど、ルックはどうだろうな。それにしてもうん、確かに無愛想だよね?と湊は苦笑した。
だけど・・・でも・・・うん、ルックはそれでも、もしかしていい人なんじゃないかなぁ、と湊は思っていた。
なんとか船頭を手に入れ、船を用意し、大きな海のような湖を渡る。そしてようやく着いて、市内に入ったとたん、何やら羽根の生えたような少年が湊にぶつかっていった。
「とろとろしてんじゃねえよ。じゃあな、バイバーーーーーーイ。」
湊は首を傾げていたが、とりあえず市の中心に向かった。
庁舎に訪れると、入り口で行く手をはばまれる。湊は警備員に、フィッチャーからもらっていた紹介状を渡そうとしたが、懐に手をやってから、あきらかに挙動不審になった。
「あれ?あれ?まさか、さっきの・・・」
「ああ、ははーん、お前さん、この街は初めてだろ。チビどもにやられたな。このトゥーリバー市はもともと人間とコボルトの街だった。それがいつごろからかあの翼の生えたチビどもが山から下りて来て住みつくようになったんだ。あいつらときたら、かっぱらいはするし、儀式だかなんだかしらないが、変な匂いの煙を焚くし、困ったもんだ。おまえさんも、おおかたチビどもにやられたんだろう。どうだい?サイフは大丈夫か?はっはっはっはっは。まあどっちにしろ、許可のない者は中には入れられん。」
どうやらさきほどぶつかった時に掏られたらしい。
「最悪・・・お財布もとられちゃった。」
はぁ、とため息をつきながら湊は踵を返し、歩き出した。
ルックはそれをみて少し首をかしげた。いつもの湊なら笑って済ませそうな感じなのに?今の湊はあきらかに落胆した様子だった。
その時、向こうのほうで先ほどぶつかってきた男の子の姿が見えた。
「あっ。追いかけなくちゃ!」
湊はあわてたように駆けだす。とりあえず一緒に来ていた仲間もそれについて行く。ルックも黙ってついて行った。
小さな川に渡らせている木の橋を越えると先ほどの少年がいた。だが湊達に気づくと、それこそ飛ぶ勢いで駆けだした。
必死になって追いかけたが、最終的に追い詰めたところで、翼を使われて逃げられた。
湊はついため息を少しついてしまった。何気にルックにそれを見られたのには気づいていないが。
そのままもと来た道をもどると、先ほどの庁舎にて、フィッチャーがえらいさんらしきコボルトに、同盟軍主を連れてきたなどと嘘を、と鞭打ちをされそうになっていたのでとりあえず助けに行き、結局それでトゥーリバー全権大使のマカイを訪問する事が出来た。
先ほどのコボルトはコボルト族長のリドリーというらしい。マカイとリドリーと話をし、同盟に関しての詳しい話は翌日、ということで宿を紹介してもらった。
「えーと、じゃあルックは僕と一緒の部屋でいい?」
「ああ、別にかまわないけど・・・」
部屋に行くと、湊用に用意されていたはずの食事は先ほど紹介状とともに財布をかっぱらって行ったウィングボードの少年に食べられていた。
「はは、また会ったね。しょうかいじょう、てやつかい?欲しいのは。ばっちゃんに読んでもらったんだけどね。あんたが同盟軍のリーダーてのは本当かい?」
「・・・ああ、そうだよ。」
「ふーん、・・・・・・・・。だめだね、やっぱ信用できないや。じゃあね、晩御飯は代わりに食べておいてあげたからね!」
じろじろと見たあとで少年はそう言ってから翼を使って窓から飛んで行ってしまった。
しばらくそれを見ていた湊は、またため息をついてからベッドに座りこむ。
「・・・ちょっと。」
「んーなぁに、ルック。」
「なんだか、いつもと違う感じがするんだけど。」
「?何が?」
「君。いったいどうしたってのさ。」
「え・・・?・・・あはは。ルックてば案外僕の事見てるんだ?」
「っ。茶化すのはやめなよ。」
「・・・うん、ごめん。・・・ちょっと、独り言、言ってもいいかなぁ。」
「・・・いいんじゃない。独り言なんだから。」
そう言うと、ルックは向かいのベッドに座りこんだ。湊はしばらく黙っていたが、おもむろに口を開いた。
「・・・僕は僕であるからリーダーに選ばれたって訳じゃない。僕がかの英雄だったゲンカクの義息子だから・・・そして“輝く盾の紋章”を手に宿していたからこそ、選ばれた。シュウさんにリーダーになるべきだ、と提案された時は正直悩んだ。そんな凄い役の器に、僕はふさわしいんだろうか、と。でもふさわしいかどうかじゃないな、コマがそろっているだけで、中身は別に僕でも誰でも良かった訳だろうし、と思った。だから引き受けた。こんな僕でも役に立つのなら、と。」
少し俯き加減でポツリ、ポツリと語り出す。
「・・・君は・・・」
「っでも。いくら名目上のお飾りだったとしても、いい加減でいればいい訳は、ない。少しでも、リーダーとしてふさわしくなれるように、少しでも、こんな僕に対してでもついて来てくれる皆の為になれるように、がんばりたいとは思うんだ。」
「・・・。」
「今回は軍主として初めて請け負った重要な内容。改まった初仕事として、しっかりやりたいと思ってた。・・・だのに・・・」
そして湊はさらに俯いた。
「・・・軍主としての君なんて、知らないよ。」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ