ルック・湊(ルク主)
ルックの声が心に刺さる。
そう、だ、よね。ルックはレックナート様に言われて来てくれてるだけだもん。仕事だからこうやって付き合ってくれている。
それだけでも感謝、してる、けど・・・。
それでもやはりズバッと知らない、と言われると胸に刺さる。
ああ、やっぱり呆れてるんだろうな。情けない軍主だ、と。もしくはそれすらもどうでもいい、とかかな・・・。
「星が、君を選んだんだ。」
「・・・え?」
「誰かがどんな理由で君をどう選んだかなんて知らない。だけど、天の星は君を選んだ。星主である君がしっかりしないと、他の星は拠り所を失ってしまう。君がいないと、星も集まらない、“運命”は狂ってしまう。」
湊にはルックの言っている事はあまり分からなかった。でも・・・。
「どうして、僕なんだろう。それこそ、僕じゃなくても良かったんじゃ・・・」
「星が、君にその資格があると認めたんじゃないの。」
「だ、だって。何もできないのにっ?いざとなってもこうやって情けないばっかなのに!?ルックだって僕の事、だめで役立たずな、手のかかるバカだとか思ってるくせにっ!!」
つい、感情が高ぶって、ルックに当たってしまった。
だけど・・・だけどいつもため息をついているルック。きっと、絶対、いつだって僕の事、呆れてる・・・。
かといって八つ当たりなんて・・・さらに情けない・・・でもとまらない・・・。
「・・・どうして君なのかなんて、僕が分かるわけないだろう。」
「・・・。」
「だけど。星は君を選んだんだ。それだけで十分。・・・それと・・・君は別にひとりでなんでもしようと思う必要はない。自分がやらないと、と思い詰める必要もない。なんの為に星が集まっていると?なんの為にこの僕が手伝っていると?」
ルックの言葉が今度は心に染みいる。
「だけど・・・ほんとうに・・・僕は何をしたらいいのか・・・どう変わればいいのか・・・分からなくて・・・。」
だがついそう漏らしてしまう。
「・・・今のままでいいんじゃないの。」
ポツリ、と言ったルックの言葉。
湊は顔をあげた。
「今の君を、星は選んだんだ。何も変わる必要なんて、ない。ありのままの君でいいと思う。」
大丈夫だ、湊なら出来る、がんばって・・・。色々励ましの言葉は貰った。
だけど。
こんなに、こんなに欲しかった言葉を言ってもらえるとは。
いや、実際はそう言って欲しいと思っていた訳ではない。自分でもどう言って欲しかったかなんて分かってなかった。
でも今そう言われて、湊はどれほどその言葉を欲していたか分かった。
今のまま、ありのままで、いいん、だ?
「それに・・・」
ルックは言いながらどこに持っていたのかリンゴを湊に投げてよこした。
「別に僕は君の事、手のかかるバカだとは思っていない。まあ世話の焼ける子猿だとは思ってるけどね。」
ルック。
やっぱりルックは無愛想だけど、でもすごくいい人だ。やっぱり僕はルックと仲良くなりたい。
「って、こ、子猿!?」
「ああ、僕からしたら君は子猿だよ。ほら、さっさと食べれば?」
その時湊のおなかが鳴った。ああ、そういえばおなか、空いてたんだなぁ、そんな事すら気づく余裕も、なかった。
「うん、ありがとう、ルック。ルックはちゃんと下で食べてきてね。」
「・・・言われなくともそうするよ。だけど僕はあまり知らないところで食事はしない。だからここで食べる。それに君みたいにたくさんは食べないからね。残ったものは仕方ないから君が食べれば?」
「ありがとう・・・。」
ほんとに、ありがとう。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ