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ルック・湊(ルク主)

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虎視3



その後の湊の周りは絶えず誰かがいるようになった。
シュウが放置するには少し問題だ、と判断し、ある程度の者には内密に話をしたらしい。
やってきている臨時の商人やらの店を開いている者とは契約を交わしている訳で、怪しいから撤退してくれ、とも言い難い。だからあとしばらくの期間、臨時でやってきている店舗との契約が終わるまでは、絶えず護衛をつける事にしたらしい。

「うかつな事をするからだ。」
「でもルック。仕方ないよ。まさか変な人がいるとは思わないじゃん、普通。」

ルックがため息をついて文句を言うと、湊がそう言った。

「こんなご時世で、油断するほうがおかしだろ。」
「でも、ちゃんと素性とか、それなりに調べた上での営業許可みたいなんだよ?それに実際けっこうな繁盛らしいんだよ、活気も出るしね、その問題以外は良い事ずくめなんだよー。」

そりゃあね、調査はもちろん、しているだろう。
それに調べようもないだろう、そういった類で、過去に問題を起こしている者でない限り。
だからといって・・・いや、もう仕方ないだろう、とりあえずは油断しない事、それしかない。
そう思ってルックは黙った。
その後、ルックが魔法兵の訓練で湊から離れる前に、シーナがやってきた。

「今からどうする?」
「あ、お昼ごはん、食べない?ルックにね、さっき誘ったら、これから訓練あるから、その後で食べるって言われたんだー。満腹よりは空腹の方が集中しやすいんだって。僕だったらおなか空いてたらなんも出来ないけどなー。」
「クク、湊はな。いいぜ、俺もまだだし。じゃあ行こうぜ。」

2人で歩いていると、花屋に出会った。

「あ、お花屋さん!城内で割と会うねえ。」
「ええ、ご注文いただいた花や苗をお持ちしたりしてるので。」
「あー、おもにナルシーの人らでしょ?」
「ナルシー?」
「あ、ごめんなさい、なんていうか、その、華やかな格好してる、なんだか優雅な音楽でも流れてきそうな人達の事ー。よく庭園でお茶会してるよ。」
「ああ。ふふ、なるほど。そうですね、先ほどもその方々のところに持っていってました。では、失礼します。」

花屋と呼ばれた男は頭をさげてから正面出入り口の方へ歩いて行った。

「誰、湊、今のは。城内でよく会うって?」
「え?花屋さんだよ。綺麗な花とか珍しい花とか売ってるから、けっこう繁盛してるんだよー。この間もね、会ったんだけど、ルックと歩いてる時にぶつかっちゃって。」
「ふうん。」

特に不審なところがあった訳ではないが、城内でよく湊と会うっていうのは気になる。後でルックにも聞いてみよう、とシーナは思った。

「あ、ねえ、シーナ。お手洗い、行ってくる。」

レストランで昼食を注文した後、湊が言った。

「じゃあ俺も・・・」
「え、いいよ。この店の中にトイレ、あるんだよ?出入り口だって一つしかないのに。トイレにまで、ついてこられるの、ちょっとアレなんだけど。」

だけど・・・と渋るシーナに、湊はニッコリと笑って、すぐ戻ってくるよ!と走っていった。
姿が見えなくなってしばらくした時に、レストランの庭に面した方面から爆発音が聞こえた。

「なっ!?」

シーナが立ちあがる。ちらりと湊が消えた方を見て、だが庭のほうで叫び声が聞こえると舌打ちをし、走ってそちらに向かった。
一方湊の方でもその音は聞こえた。
手を洗っている時だった。ハッとして音のしたほうへ駈け出そうとした瞬間、背後から羽交い絞めにされた。抵抗しようとした瞬間妙な薬を嗅がされた。
一瞬、前にルックとクスクスの街に悪者退治に行った時を思い出した。
また、薬・・・と苦々しい思いをしたとたん、湊の意識がどこか違うところに飛んだ。と言っても身体はそのまま立っている。

「さ、歩いて。」

そう言われ、湊は自分の意識がないままに、言われた通り歩き出した。
そうしてその男と湊は、皆が逃げたか庭の方に気を取られている隙にさりげなく出入り口から出て行った。

残念ながらシーナは気付けなかった。
湊が普通にその男と出て行っている時に、シーナは爆発の際になぜか発生した植物性の魔物と戦っていたからである。残念ながらその場に居合わせた戦闘員はシーナとザムザだけであった。
ザムザが火の紋章が得意なおかげで、なんとか2人で魔物を倒した後、ハッとして店内に戻り、そしてトイレの中もくまなく探したシーナは、珍しく青ざめた真剣な面持ちで道場にいるルックのところまで走っていった。
そうして道場についたシーナを見た瞬間、ルックは即座に理解した。魔法兵らに、とりあえず今日はここまでだと告げてから、シーナと共に裏庭に出る。

「っくそっ!!!」

悪態をついたところで、ルックは俯き、唇をかみしめ、ギロリと目を光らせたあとで深呼吸をした。そうして目を閉じる。

「・・・・・・・・・・・。っく・・・。ダメだ・・・意識がないのか、紋章の存在を感じる事が出来ない・・・。」
「ああ、くそっ。俺のせいだっ・・・。」

シーナが呟く。
ああ、責めてそれで湊が助かるなら、いくらでも責めるさ。
ルックはそう思いながら言った。

「あんたのせいじゃない。簡単に聞いた状況を聞く限り、あの場所のトイレまでついていくべきだとは言わないし、戦闘員としてやらなければならない事だった。・・・っくそ。とりあえずシュウのところに飛ぶ。人手が必要だ。」

その後、幾人かで手分けして探し始めた。
やみくもに探していても仕方ない、と、ルックとシーナは石板の前で思いめぐらせていた。何かヒントになるようなものはないだろうかと、ルックはレストランでの前後の状況を再度シーナに確認し出した。


「・・・お前らだけ?湊についてないってことは・・・。さっき青いのが真剣な様子で駆けているのを見かけた。まさか?」

そこに詩遠がいつの間にか来ており、2人に問いかけてきた。

「そのまさか、だ。」

ルックが静かに言った。何も知らない者が見れば、冷静で落ち着いていると思ったであろう。
だが詩遠には分かった。
心底、心配し、そして、怒っている。余計な事は何も言わず、詩遠は口を開く。

「今、いなくなったと分かっている店舗の者は分かるのか?」
「シュウが調べさせている。」
「っあ。そう言えば、なあルック。お前、花屋って知ってるか?」
「・・・?・・・ああ、そういえばこの間湊とぶつかっていた・・・。変わった中身の持ち主だろ。」
「変わった・・・?いや、今日も丁度レストランに行く前にばったり会ったんだ。よく城内にいるらしい。ベッドに置かれていたのも草花だろ。さっきの爆発後に発生した魔物も植物系だった。ちょっと俺、その花屋に行ってみるわ。」
「俺も行こう。」
「じゃあ2人はそいつを探して。僕はレストランを当たる。例の爆発は呆れるほど、不自然なほどタイミングがいい。ハイ・ヨーなどに少し聞いてみる。花屋も怪しいが、そいつが城を出て行った後の事なんだろ、レストランでの出来事は。別件も可能性として考える。ああ、詩遠はその紋章の存在をむき出しにしててくれない?すぐに僕が合流しやすいように。」

いつもからは考えられないくらい饒舌に言った後で、ルックは消えた。
詩遠とシーナもとりあえず城下町の方へ走った。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ