二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

さくまさんの

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 

私は



芥辺探偵事務所のソファにベルゼブブは座っていた。
向かいにはアザゼルが座っている。
どちらも結界の力のかかった小さな姿である。
召喚したのは佐隈ではなく所長の芥辺だ。
芥辺は自分のデスクのイスに腰かけ、事務所の電話でだれかと話している。
「……ああ、わかった。こちらのことは心配しなくていいから、ゆっくり休むように」
電話の向こうのだれかにそう告げた後、芥辺は受話器を置いた。
それから、その顔をベルゼブブたちのほうに向ける。
「おい」
話しかけてきた。
「今、さくまさんから電話がかかってきた」
ベルゼブブはソファから離れ、羽根を使い、芥辺のほうへ飛んでいく。
さっき聞こえてきた芥辺の話の内容から、電話の相手は佐隈だろうと推測していた。
だいたい、今日は佐隈が事務所に来ていない。
それが気になっていた。
芥辺はベルゼブブが近づいてきたのに関心を示さず、話を続ける。
「さくまさんは事故にあったそうだ」
「!」
ベルゼブブは眼を見張った。
しかし、芥辺は落ち着いている。
「幸いにして、軽傷で済んだらしい。だが、運ばれた病院に、二、三日、入院することになったそうだ。すぐに退院するから、見舞いはいらないと言っていた」
そう芥辺は言うと、口を閉ざし、眼をデスクに置かれた本のほうへやった。
これで、この話は終了らしい。
けれども。
「アクタベ氏」
ベルゼブブはこの件を終わりにするつもりはなかった。
「頼みがあります」
芥辺がベルゼブブを見た。
「なんだ」
その眼差しにも声にも迫力がある。
「さくまさんが入院している病院の名前を教えてください」
ベルゼブブは臆することなく、言う。
「それから、私にかかっている結界の力を解いてください」
「どうしてだ」
「さくまさんのお見舞いに行きたいからです」
「それなら、入院先は教えるが、そのままの姿で行けばいい」
「私は他の人間に見えても問題のない姿で行きたいのです」
芥辺の目つきがいっそう厳しくなった。
「……そういえば、ベルゼブブ、おまえ、さくまさんと必要以上に親しくしているようだな?」
ソファのほうでアザゼルが息を呑んだのを感じ取る。
アザゼルはその職能により、ベルゼブブと佐隈が恋愛関係にあるのを知っている。
だが、なにも言わないでくれている。芥辺にも話さないでいてくれている。
それが、アザゼルなりの応援なのだろう。
けれども、さすがに、今、助け船を出すことはできないようだ。
仕方ない。
芥辺は悪魔が恐れるほどの人間なのだから。
しかし、今の自分は芥辺を恐れて黙ってしまうわけにはいかない。
「必要以上かどうか、あなたが決めることではありませんし、それに、私は、必要だからさくまさんと親しくしているわけではありません」
ベルゼブブは冷静に言った。
直後、芥辺はその身体から凶悪と言っていいほどのオーラを漂わせる。
「ベルゼブブ、自分が何であるのか、わかっているのか」
重い、脅すような声。
芥辺はベルゼブブが悪魔であると言いたいのだろう。
ベルゼブブは悪魔で、さくまは人間。
わかっている、そんなことぐらい。
それに、脅されても、退く気はない。
ベルゼブブは口を開く。
「私は」
力強い声で告げる。
「さくまさんの恋人です」
自分は悪魔で、相手は人間。種族が違う。その事実を変えることはできない。
だが、その決定的な違いを越えて、自分たちは恋人同士になった。
大切にしたいと思っている。
なにがあっても。
ベルゼブブは、にらみつけてくる芥辺の眼を、真っ直ぐに見返した。
その状態がどれくらい続いただろうか。
「……俺に、馬に蹴られる趣味はない」
そう言い、芥辺は右手をあげた。
芥辺の力が使われる。
ベルゼブブの姿が変化する。
魔界にいるときと同じ姿にもどった。
「ありがとうございます」
ベルゼブブは芥辺に礼を言った。
けれども、芥辺は興味を無くしたようによそを向いていた。

病院の中をベルゼブブは歩く。
人間に見えるように変装している。
金髪碧眼で端正な顔立ちでありスタイルも良いため、周囲の視線を集めていたが、まったく気にせずに進んでいく。
ベルゼブブは病室に入った。
四人部屋だ。
その向かって左の窓側のベッドに、佐隈がいた。
ベルゼブブは佐隈に声をかけようとした。
だが、そのまえに、佐隈がベルゼブブのほうを見た。
佐隈は驚いた顔をした。
しかし。
次の瞬間。
その表情が、ゆるんだ。
嬉しそうに笑った。





作品名:さくまさんの 作家名:hujio