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スパーク新刊サンプル【米普・R18】

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ぎゅう、と思わず目をきつく瞑り息を詰める。靴を履いたままのつま先が窮屈な中で
きゅうとくなった。
「―……は、」
何度も断続的に吐き出したものは自分自身でも多いと思った。溜まっていたのだ。
無理はない。何しろ恋人のプロイセンとは二ヶ月以上ぶりなのだから。はぁはぁと
プロイセンの背中にもたれるようにして呼吸を整え、まだびくびく震えるペニスが落ち
着くのを待つ。肩からすとんと力が抜けて、脱力感が心地よかった。頭の中まで洗われた
ようにすっきりしている。
「……アメリカ」
振り向かないプロイセンのくぐもった声は低かった。え、と頭を上げた瞬間、後ろ手で
どんと突き飛ばされアメリカは数歩たたらを踏んだ。
「わ……っ、危ないな、何するんだい!」
「こっちの台詞だ、この早漏!」
「そ……っ」
耳を疑う暴言にセックス後の余韻など一瞬で消し飛んだ。それはあんまりな言いようでは
ないかと反論しようと口を開きかけたアメリカは、だが振り向いたプロイセンの真っ赤に
染まった顔とへの字に結ばれた口元に言葉をなくす。
「てめぇ一人で勝手に腰振って勝手にイって終わりやがって! 俺はてめぇの
 ダッチワイフかっ?」
わんわんと浴室に響くのも構わず叫んだプロイセンは感情をそのまま表情に露わにして
いて、それがアメリカに自分が何をしたかを気付かせた。
「あ、」
「あ、じゃねぇ!」
「ごめん、プロイセン! そんなつもりじゃなかったんだ! ただあんまり気持ちよく
 てつい……」
「ついでやり逃げされてたまるかっ」
「やり逃げって……そんな」
「全然こっちのこと気遣いもしねぇし」
言われて視線をずらせば中途半端に勃ち上がりかけたプロイセンのペニスが目に入る。
そういえば一度もそこに触れなかったと今更に思い至って、ぶわりと申し訳なさが性欲を
吐き出してすっきりした後の頭を支配する。同じ男としてこれがどれだけ辛いかはよく
理解できる。プロイセンの怒りは全くもって正当だ。
「ごめん! ほんっとうに、ごめん! 俺が悪かった」
「……」
だからアメリカは必死でごめんと謝罪ばかりを口にした。言い訳などあるはずもなく、
ただただ「ごめんなさい」を繰り返す。
「次はちゃんとするから、プロイセンの気持ちいいことだけやるから、許して
 ほしいんだぞ」
ね、とあやすように腰に手を回すのをじとりプロイセンは見やり、それからはあと大きな
ため息をついた。
「―……もういい」
まだまだ何か言いたいことがあるのかと思っていたのに、プロイセンは諦めたように
覇気のない調子でそう言い捨てる。だがアメリカは生来すべてをポジティブに捉える
ことが得意だった。取り柄といってもいい。ぱっと途端に顔色を明るくする。
「許してくれるの?」
「……許すっていうか、今さらあれこれ言っても仕方ないだろ」
「ありがとう! 次は絶対に、」
言う端からプロイセンの尻の狭間へ伸ばしだしたアメリカの手をプロイセンはぴしゃりと
弾いた。いたい、と引っ込めた手の甲はしっかりと赤くなっていて、容赦されなかった
のがありありと分かる。
「次じゃなくて、あっち」
「あっちって……」
プロイセンはつい数分前までバスルームに響きわたる喘ぎ声を上げていたとは思えない
くらい平静な調子で言って、ついと左手を上げた。指さす先のガラス扉の向こうは大きな
窓と窓に面して設えられたこれまた大きなバスタブがある。それらを認識してもアメリカ
にはプロイセンに意図が計れず首を傾げた。
「……窓?」
「じゃなくて風呂」
「風呂」
「そ。お前がシャワー止めてごちゃごちゃやるから身体が冷えてきちまって
 んだよ。もういいから風呂沸かしとけ」
傲慢に言い放って、とんと軽くアメリカをシャワーブースの扉へ押しやると自分はくるり
と背を向けさっさとシャワーのコックを捻った。





                  <スパーク新刊サンプル>