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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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SOUVENIR II 郷愁の星

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 ランディはそれを聞きながら、自分の襲われたとき、相手の男を気絶させたオスカーはすごい、と思った。咄嗟に行動できるあたり、やはりオスカーは相当な使い手なのだろう。だからこそ、ジュリアスも信頼していたのだ。自分はまだまだだな、とランディは密かにため息をついた。
 ところで、聖地に戻ったとき、二人はあの星が半分残ったことを知った。半分で崩壊を思いとどまった星として、ここはより強い印象をジュリアス、そしてクラヴィスに与えた。
 「ルヴァがおかしくて仕方なかったそうだ。書庫でおまえが先か、私が先か、の状態でこの惑星d−13916018a−−ムワティエの資料を出し入れしていたらしいからな」クラヴィスが笑って言った。
 「そうか……」つられてジュリアスも笑った。「だからやたらこの星に詳しかったのだな、そなたは」
 はじめは興味本位で星について調べていた二人は、相変わらず半身が利かないまま、それでも生き続けてきた星にますます注目するようになった。
 「主星にはもう私の家はない。跡継ぎを守護聖として取られてそれきりだったらしい」自嘲気味にジュリアスは言った。「もちろん主星にいても良かった。だが、私はこの星のことがずっと気になっていた。そして守護聖としての力が次代に移ったことを確信したとき、この星を訪れようと決意したわけだ。……気がつけば、すっかり根を下ろしていた」
 ジュリアスは視線をクラヴィスのほうへ流した。
 「……そなたもそう思っていたのか?」
 「……だから、先を越されるとは思わなかったのだ」クラヴィスが答えた。
 ジュリアスはしばらくクラヴィスの顔を見ていたが、微笑むと言った。
 「家は今すぐでなくとも良いのであろう? 次代に完全に移るまで、まだ間があるはずだからな。……もっとも、そなたが来るころには、私はもう存在していないかもしれないから、そのときには遺言状でも残しておくことにしよう」
 「強面の御老体となって迎えられそうな気がするがな」
 クラヴィスが憎まれ口を言い、思わずランディは吹き出してしまった。
 「そなたたち!」
 ジュリアスは怒鳴ったが、その目はとても優しかった。


 後に、ランディがジュリアスについて思い出すときは、いつもこの顔だった。