SOUVENIR II 郷愁の星
ランディはそれを聞きながら、自分の襲われたとき、相手の男を気絶させたオスカーはすごい、と思った。咄嗟に行動できるあたり、やはりオスカーは相当な使い手なのだろう。だからこそ、ジュリアスも信頼していたのだ。自分はまだまだだな、とランディは密かにため息をついた。
ところで、聖地に戻ったとき、二人はあの星が半分残ったことを知った。半分で崩壊を思いとどまった星として、ここはより強い印象をジュリアス、そしてクラヴィスに与えた。
「ルヴァがおかしくて仕方なかったそうだ。書庫でおまえが先か、私が先か、の状態でこの惑星d−13916018a−−ムワティエの資料を出し入れしていたらしいからな」クラヴィスが笑って言った。
「そうか……」つられてジュリアスも笑った。「だからやたらこの星に詳しかったのだな、そなたは」
はじめは興味本位で星について調べていた二人は、相変わらず半身が利かないまま、それでも生き続けてきた星にますます注目するようになった。
「主星にはもう私の家はない。跡継ぎを守護聖として取られてそれきりだったらしい」自嘲気味にジュリアスは言った。「もちろん主星にいても良かった。だが、私はこの星のことがずっと気になっていた。そして守護聖としての力が次代に移ったことを確信したとき、この星を訪れようと決意したわけだ。……気がつけば、すっかり根を下ろしていた」
ジュリアスは視線をクラヴィスのほうへ流した。
「……そなたもそう思っていたのか?」
「……だから、先を越されるとは思わなかったのだ」クラヴィスが答えた。
ジュリアスはしばらくクラヴィスの顔を見ていたが、微笑むと言った。
「家は今すぐでなくとも良いのであろう? 次代に完全に移るまで、まだ間があるはずだからな。……もっとも、そなたが来るころには、私はもう存在していないかもしれないから、そのときには遺言状でも残しておくことにしよう」
「強面の御老体となって迎えられそうな気がするがな」
クラヴィスが憎まれ口を言い、思わずランディは吹き出してしまった。
「そなたたち!」
ジュリアスは怒鳴ったが、その目はとても優しかった。
後に、ランディがジュリアスについて思い出すときは、いつもこの顔だった。
作品名:SOUVENIR II 郷愁の星 作家名:飛空都市の八月