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こらぼでほすと 拉致10

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午後前に、トダカ家から子猫たちを連れたシンたちは本宅へ移動した。屋形船で川下りという予定だが、まず、組織側に『吉祥富貴』側の状況を説明するためだ。さすがに、他人の耳目のある場所でできる話ではないから、ここですることになる。ついでに、ニールにも聞かせられないから、わざわざ予定を組み込んだ。地下の会議室で、パネルに様々な情報を映して、担当各人が説明をする。
「セキュリティーシステムは、そちらとのマッチングはさせていないが、防御壁は強化してある。ヴェーダ側からのアクセスには制限がかかるが、組織側からのヴェーダへのアクセスには制限はかからない。その説明は、メモリースティクで渡すから、ティエリアに見せておいてくれ、フェルト。」
「組織への補給物資は、軌道エレベーターに一部備蓄させている。それと、この廃棄衛星、プラント、資源衛星なんかにも備蓄させていて、そちらから要請があれば移動させられる手配にしている。その連絡用の暗号通信のテンプレートは別のメモリースティクに記憶させてあるから。」
「オーヴとの交渉は、今後没になる。その代わり、プラント側から月のコペルニクスにオーヴからの補給物資は運搬させているから、それも。もちろん、表向きにはプラントとの交渉も没だ。ただし、フェイスとザフトレッドの一部が、そちらとの交渉はする。その通信用のテンプレートも用意している。」
「こちらで解析が終っている情報は、ターミナルを介した別のサーバーに蓄積させている。その情報は取り出せるようにしてあるから、アクセスしてくれ。そのパスワードと生体認証は、ティエリアのみ可能な作りにしているから、アクセスする際はティエリアにさせて欲しい。」
 各人の報告とメモリースティクは膨大なものだったが、フェルトと刹那は、それをひとつずつ確認して記憶する。ここからは、組織の再始動まで時間がない。できるかぎり、情報や物資を提供するには、この場でフェルトに託すことになる。
「フェルト、再始動の予定は、どのくらいだ? 」
「予定では、今年の冬ぐらいになると思う。・・・・アレルヤと・・・ニールの機体がロールアウトしてセッティングしているから・・・それが終れば・・・」
 ティエリアと刹那の機体は、すでにロールアウトしている。エンジンのマッチングはティエリアの機体だけだが、刹那の機体も他は調整まで完了している。現在は、アレルヤが搭乗する予定の機体の調整中だ。最終的に、ロックオンが乗る機体がロールアウトするのが夏になる。ただし、その二機のMSに関しては、搭乗者は決定していない。ひとりは行方不明だし、ひとりはリタイアしているからだ。
「フェルト、アレハレたちは、そちらが再始動して情報収集すれば、まもなく発見できるはずだ。ニールは・・・その・・。」
 『吉祥富貴』は、アレハレたちの所在を掴んでいるし、現在も継続監視中だ。だから、そちらは搭乗できる。だが、ニールは無理だと、言い辛くてアスランも言葉を続けられない。
「わかってるよ、アスラン。ニールじゃない人が乗る。」
 誰かは、まだ不明だが、次のマイスター候補が乗ることは、フェルトも納得している。とてもではないが、今のニールには搭乗させられないのは理解している。だが、気分的には辛いところだ。現在の組織の状況では、マイスター候補の選定も訓練もできていない。これからで間に合うのか、フェルトも不安だ。そこへ、刹那が立ち上がる。フェルトを見下ろすようにして、言葉を吐き出した。
「フェルト、次のマイスターは俺が探している。だから、そちらは問題ない。俺が再始動に参加する時に連れて行く。」
「え? 刹那? 」
「まだ確定させていないから、今は明かせないが、ひとり、候補はいる。だから、調整までロックオンの機体も完了しておいてくれ。」
「候補? ヴェーダじゃなくて刹那が選んだの? 」
「俺が選んだわけじゃないが・・・マイスターとして相応しいかは観察しているところだ。それから、ニールは二度と組織には関与させるつもりはない。それだけは、絶対に俺は認めない。絶対に、ニールを組織に連れ戻そうとするな。」
 もう二度と、あんな気持ちになりたくないし、ニールの体調からしても復帰なんて無理な話だ。だから、それだけはきつく戒める。たぶん、ティエリアも同意見だろう。具合の悪い時の状態を知っているティエリアもニールの復帰なんて望んでいない。
「フェルト、僕からもお願いするね。ママは連れ戻したりしないでね。」
「フェルト、私からもお願いします。ママは、こちらで保護しておりますから。何も教えないでください。」
 キラとラクスも立ち上がって、フェルトに頭を下げる。そんなことをしたら、ニールは確実に寿命を縮めるからだ。それだけは阻止する。『吉祥富貴』にとっても、ニールは日常担当という非常に貴重な位置に居る。子猫たちの帰れる場所であると同時に、年少組の憩いの場でもあるのだ。それは失くすわけには行かない。
「・・・そんなに悪いの? ・・・」
 フェルトにはニールの体調なんてものは知らされていない。ある程度の話はしているが、事実よりは軽めに告げているし、ニール当人もフェルトに気付かせるヘマはしていない。
「悪くはない。復帰したら悪くなる。」
 はっきりと刹那が申し渡す。宇宙空間で過酷な戦闘状況なんてものに陥ったら、今のニールでは体力的にも精神的にも保たない。ここで、緩やかな生活をしていればこそ、ニールは元気なのだ。じっと刹那がフェルトを睨む。言葉でなく、赤い瞳は雄弁に、その事実を物語る。だから、フェルトもコクリと首を楯に降る。
「・・・わかった。言わない・・・」
 フェルトにしても、二度と、あの喪失感は味わいたくない。一度目の武力介入で、何人もの死者を出した。これ以上には失いたくない。だから、刹那の意見に深く頷く。
「その代わり、ママは、ここでずっと待っているからね、フェルト。ちゃんと、きみも帰ってくるんだよ? 」
「うん。諦めない。」
 諦めたら全てが、そこで終る。最後まで悪足掻きでも足掻き続けることが大切だ。キラが、うん、と、フェルトの頭を撫でる。できるだけ救助も援護もするつもりのキラだが、当人たちが足掻いてくれないと助けられない。諦めてしまったら、間に合わなくなることもある。
「刹那の言うマイスター候補のほうは、俺もチェックしている。たぶん、問題はないと思うから、ティエリアに伝えておいてくれ。」
 諜報担当のハイネが、刹那の言葉にダメ押しをして、打ち合わせは終了した。ティエリアが降りて来られるのか、どうかは微妙だから、とりあえず渡せる情報も物資も、フェルトに説明しておいた。メモリースティクは、寺で渡すとして、とりあえず予定通りに川下りに出かけることになる。
「俺、外れてもいいか? 」
「ああ、お疲れ様、ハイネ。夕方には戻るけど、食事のほうは準備してるからってニールに伝えておいてくれ。」
 どこへ、と言わなくても、アスランもハイネが休息する場所は判っている。ハイネのほうも異論は無いから、「了解。」 と、返事した。
作品名:こらぼでほすと 拉致10 作家名:篠義