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こらぼでほすと 拉致10

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「けど、ハイネ。今夜は自宅に帰れよ? 子猫たちとねーさんをゆっくりさせてやるんだからな。」
「わかってる。ちょいと顔出すだけだ。ママニャンの間男としては、その亭主に年始の挨拶はするべきだろ? 」
「それ、一般常識的としては有り得ないと思うけどな。」
 ディアッカが呆れたように苦笑するが、納得はしている。『吉祥富貴』は普通ではない。だから、関係が普通でないのも納得のことだ。
「いいんだよ、そのうち強奪する算段すんだ。」
「それこそ無理だろう。話は聞いてるぞ。」
 イザークが、ハイネの宣言に鋭いツッコミだ。本山からの三蔵の上司様ご一行が、ニールを三蔵の嫁と認めたというのは聞いている。あちらから認められたのだし、三蔵も手放すつもりはないだろう。
「だから、プラントへ強奪するさ。」
「ハイネ、そうなったら、僕、悟空の味方をするからね。」
「おいおい、キラ。」
「だって、プラントなんかに連れて行ったら、悟空が困るだろ? 」
 というか、キラたちがプラントに移ることになる頃には、悟空たちも本山に戻ることになる。そんな時にややこしいことをして、悟空との繋がりを断ち切られるのはキラとしては、断固阻止だ。
「合意の上でもか? キラ。」
「何言ってるの? ハイネ。ママが合意なんてするわけないだろ。ねぇ、ラクス? 」
「ございませんね。ハイネに合意するくらいなら、私としてくださいますわ。」
 それは確実に有り得ない。ニールにとってラクスは娘というスタンスだから、同衾しているのだ。つまり、ハイネと相思相愛なんてことはない、と、断言している。手厳しいなあ、と、苦笑するハイネも、そんなつもりはない。実際問題としてプラントへ強奪なんてできるわけはないからだ。
 みんなで地下から地上へと移動する途中で、桃色子猫は黒子猫の横に並んだ。親猫がいないところでないと話せないことが、桃色子猫にもある。
「刹那は冬には戻る? 」
「予定が決定したら緊急通信で知らせてくれ。それまでには宇宙に上がる。」
「それなら、エクシアだけ先に戻して欲しい。」
 機体と太陽炉のマッチングは実物が必要だ。今回の刹那の機体は、特に太陽炉とのマッチングが要になっている。フェルトとしては、完全に機体を稼動可能な状態にしておくなら、エクシアの太陽炉をセットするべきだと提案したが、刹那の答えは否だ。
「宇宙に上がるのに、フリーダムは借りられない。エクシアで上がる。それに、宇宙でも少し確認しておきたいことがある。エクシアは必要だ。」
 地球上の歪みは、大きなものは確認できた。後は、宇宙のほうだ。そちらにも、いろいろと情報はあるから、刹那は最終的に、そちらの確認もするつもりだった。それには、火力のない小型艇では危険だから、隠蔽皮膜を使えるエクシアが必要になる。さすがに、フリーダムで、そんなことをしているところを発見されたら、マズイし、フリーダムは基本、地上でキラの足として登録されている機体だから、フリーダム自体が宇宙にいるというのも連邦に知られるのは危険だからだ。ツッコミどころは作らないに越したことは無い。それは刹那も戦略的に理解している。
「刹那、フリーダムは貸すよ? 」
「ダメだ。連邦に、おまえたちが極秘に動いているのがバレる。だから、宇宙に上がる時はエクシアで上がる。」
「じゃあ、エクシアに見合うブースターとか用意させておくね。弾薬とかも補充はしておくけど、他には? 」
「俺が使える手持ちの武器を頼む。」
「了解。ということはパイロットスーツも動きやすいほうがいいか。アスラン、そういうのあったよね? 」
 どこかへ潜入するつもりらしいから、そういうことなら、その行動に見合うものが必要だ。キラは物資のほうは把握していないから、ダーリンに尋ねる。
「大丈夫だ。うちは、一通り揃えているから手配しておく。刹那、あまり無茶はするな。エクシアは万全じゃない。」
 キラが腕ちょんぱしたエクシアは、その部分の不具合を抱えている。それにエクシアの右腕も外しているから戦闘には不利な状態だ。
「わかっている、アスラン。夏には一端、上がる予定だ。」
 再始動までにチェックしておくことは、まだ残っている。宇宙のほうが範囲が広くなるから、三ヶ月ほどかける予定を、刹那はしている。それまでに、もう一度、アイルランドを訪れることと、もうひとつの軌道エレベーター周辺も確認しておくつもりだ。
「フェルト、秋には合流できる予定だ。」
 アスランに返事して、となりの桃色子猫にも予定を伝える。再始動が冬なら、それまでに戻ってエクシアの太陽炉を新しい機体にセッティングさせなければならない。
「わかった。待ってる。」
「これで話すことはないか? 桃色子猫。その手の話は地上に出ると話せないぞ。」
 全員でエレベーターの前に到着した。イザークが内密の話なら、ここで、と勧める。地上に戻れば、本宅の人間がいるので、さすがに、そこではできなくなる。
「・・あと・・ニールに逢えなくなるから・・・お願いします。」
 ぺこっと桃色子猫は周辺に頭を下げた。いろいろと組織でティエリアと休暇の予定は話し合っていたが、どう考えても次にフェルトが降りてこられる時間は取れない。辛うじて、ティエリアには春の降下を予定しているが、これを実行すれば、後は再始動までのカウントダウンで、ゆっくりとしている暇はなくなる。
「もちろんですわ、フェルト。ママのことはお任せください。適当に誤魔化しておきますから。」
「でも、降りてくるなら教えてね。」
 キラやラクスはフェルトの肩や腕に手を置く。そこいらは、『吉祥富貴』の担当だ。適当に誤魔化しておくつもりで、年少組は考えている。そうは問屋が卸さない、と、ハイネは内心で呟いて苦笑した。年少組が考えているほど、ニールはボケていない。すでに、組織の再始動の時期は、ほぼ把握しているし、その情報の確保も考えているからだ。




 フェルトが帰った後、すぐに刹那も出かけた。三月には一度、戻るつもりだから、それまでの時間を考えたら、ゆっくりしている暇はなかったらしい。学生組は後期試験が始まり、シン、レイ、悟空、紅は、そちらを優先しているので、店のほうは少し人手が足りなくて、ニールも出勤している。とはいっても、経理とバックヤードの手伝いが主になる。
「八番の料理が上がったぞー。」
「りょーかいっっ。」
 厨房からの声に、ウェイター姿のニールが走っている。基本、店のお客様というのは、八戒の施術を受けて軽い食事をしつつ飲むから、施術の時間の終わる頃に料理が並べられる。ワゴンで料理を運んでセッティングする頃に、お客様がお戻りになる。
「珍しいな、ニールがウェイターか。」
 戻って来た上得意のナタルが卓の横に陣取っているニールに目を遣る。連邦軍に所属しているナタルは、暇があれば八戒の施術を受けに来る。
「はい、シンとレイが試験休みなんです。」
「ああ、そうらしいな。」
「ご指名していただいてるのが軒並み休みで申し訳ありません、ナタル様。」
作品名:こらぼでほすと 拉致10 作家名:篠義