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PM5:00

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しかし、何もかもが先程と同じというわけでもなかった。
あかねも、そして乱馬も。
先程は、お互いがそっぽを向いて座っていたのだけれど、
今こうして並んで座っている二人は、
お互いがお互いの方を向いて、そしてとても穏やかな表情をしていた。
「もっと近づかねえと、ちゃんと曲が聴こえねえよ」
「じゃあ、聴こえる所まで近くに来ればいいでしょ」
…一見ぶっきらぼうな言葉の応酬だけれども、
口にしている二人自体の表情は、自然と緩み、そして自然に笑顔になる。


「…もう、聴こえる?」
「おう」
…いつしか二人は、お互いの体を寄り添うようにしてMDを聴くように席についていた。


窓から差し込む黄金色の柔らかい夕陽が、寄り添った二人の姿を優しく包み、照らし出す。
お互い、特に何も語るわけでもない、その空間。
先程は、グランドからの雑音と壁時計の音が二人の耳に葉いやに響き渡っていたはずなのに、
同じ音でも、同じ音量でも。
状況が一度変われば、全く気にはならなくなるのが不思議だ。
…ふと、壁掛け時計を見あげると、
時刻はぴったり、ジャスト五時。
くだらない喧嘩を始めてから、ちょうど五時間後の事だった。




いつも居なれた教室とは少し雰囲気の違う、二人きりのこの放課後の教室。
少しセピアのこの空間が、素直になれない二人を、ちょっとだけ素直にさせてくれる、不思議な「魔法」が走る時間。
いつも「隣」にある乱馬の席を、同じ「隣」でも、もっともっと近くに感じることが出来る時間。
仲直り出来たのも、不思議な魔法がかかったのも。
乱馬を近くに感じることが出来たのも。
…それは、ぴったりジャスト五時。


「…好き」
「えッ…俺の事!?」
「放課後の教室の事よ」
「ちぇッ…」
「…でも、乱馬と同じくらい、好きかもね」
あかねがそう言って乱馬に優しく笑いかけると、
「じゃあ、すげえ好きなんだな」
乱馬は、自信満々な口調でそう切り替えしてきた。
「どっからそんな台詞が出てくるのよ。この口か?」
あかねは、そんな乱馬の唇を軽く指でつついてやりながらも、
「でも、まるっきり嘘ではないわ」
そう言って、ペロっと舌を出して笑った。
「…だろ?」
あかねが唇に触れたその指をそっと握るようにして外しながら、
そんなあかねと一緒に、乱馬も嬉しそうな顔で笑っていた。


ようやく仲直りできた二人が、
喧嘩していた分の時間を取り戻すべく、甘く楽しい時間をスタートさせるその時刻。
…時刻はやっぱり、ジャスト五時。
作品名:PM5:00 作家名:永野刹那