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水底にて君を想う 波音【1】

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 検査を終え、十一時を回る頃、賢木はバイクを走らせていた。
(まいったね)
 確かに脳の一部が活性化している。
 それが検査結果だった。
 もっとも、それで何が起こっているのかまでは分からない。
 一時的な事で、すぐに治まるのかもしれない。
 皆本はしばらく経過観察が必要だと言っていた。
 高熱の影響、というのが一番ありえそうだ。
 賢木は夏に向かう、夜の空気を吸い込む。
 リミッターは皆本が調整したものをつけることになるだろう。
 しかし、一番の問題はそこではなかった。
(しばらくデート禁止ってのがなあ)
 思い出して、吸った空気を長く吐き出す。
 理由は分かっているが、かなり辛い。
 能力の突然の発現がありえる以上、なるべく不安定になることを避けるのは当然の処置だ。
(夜の営みって、いろいろ不安定になるからね)
 賢木は自分を納得させるべく、そう考えるとバイクのスピードを上げた。
 それに、知りたくもないことを透視んでしまうかもしれない以上、デートという気分でもない。
 かなりの遠回りをして、家につく。
「?」
 マンションを見上げれば玄関の前、誰かが立っている。
 賢木は全身を緊張させる。
 懐に忍ばせてある武器に手をかける。
 相手が見える位置まできて、緊張が一気に緩む。
「賢木」
「皆本」
 バベルで別れたばかりの友人のが何故かそこに居た。
「どうしたんだ?」
 武器から手を離し、玄関の鍵を開ける。
 とにかく、入れよと促す。
「晩飯は?」
「簡単なもの買ってきたよ。今から作るのも大変だろ」
 言いながら、手に提げた袋を見せる皆本。
「アルコールは危ないから止めといたけどね」
「う~、ビールもなしかよ」
 口を尖らせる賢木に皆本はクスリと笑う。
(子供みたいだな)
 思わず思って、賢木を見れば、ジト目でこちらを見ている。
「透視むなよ」
「透視んでねーよ」
 部屋に上がれば、割合片付いた部屋に通される。
「で?」
 お茶を用意しながら、賢木は皆本を見る。
「うん」
 テーブルの上に、サラダと牛丼が出される。
「とりあえず、二、三日は一人にしない方がいいかと思って」
 皆本の言葉に賢木の目が丸くなる。
「このまま、治まるんじゃないかとは考えてるけど、不安定なんだし」
「え、いや」
「その状態じゃ、他人が多いのも嫌だろ。しばらく、僕がここに泊まるよ」
 何故か賢木の心臓が跳ねる。
「おいおい、俺があの子達に殺されちまうって」
「大丈夫だよ。中学生になってだいぶ落ち着いたしね。分かってくれると思うよ」
「……」
 『いや、絶対に殺される』という言葉が賢木の喉で止まる。
 昼間の温もりが、妙に鮮明に蘇る。
「あ、僕がいる方が辛いなら」
 それはセイコメトラーの賢木を気遣っての言葉だ。
 慌てて首を横に振る賢木。
「そ、そうだな。そうしてくれると助かる」
 思わず、そう返してしまった。
 胸の奥で、何かが音を立てているような気がした。