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【銀土】銀さんに乗っかってまじめ話の土方

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てくてく歩きながら時折たんぽぽなどを摘んでみる沖田を連れて、土方はこの日、攘夷浪士の粛清に出かけた。

午前八時のことだ。世間では春だ桜だと騒いでいても朝はまだしんみりと寒く、土方はひとつ舌打ちをする。寒いのは、あまり得意ではなかった。浪士を斬る環境にいちいち文句をつけても仕方のないことだとは分かっていたが、胸糞の悪い仕事のときは天気にくらい何かを求めたって構わないだろう。



さくさくと料亭に踏み込んで、一時間以内で無事に仕事を終えたのはいいが、稀有なことにこの日は沖田が不調だった。途中の道では花の蜜を飲むなどしてあんなに子供じみた真似をしてみせていたくせ、不意に悟りきったような目をして土方を呼び止めたのだ。



そしてこんなことを言う。「土方さん、俺はね。こんな国あんまりどうとも思わねェから、だから俺が人を斬るのは全部近藤さんだけのためなんです。……本当に、全部全部がそうなんです」



嗚呼おい、どうしたことだ!土方はそこで絶望的なまでに嫌になった。国のために彼等を斬りなさいと命じられて、だからといって刀に親しい沖田を今日ここに連れてきたのは失敗だったのだ。何故なら、この子供様は最近人を斬ることに関して何事か物思うらしくご機嫌斜めだったから。それを見落として(いや、違う。分かっていたのに目をつぶったのは自分だ。)無理矢理にこんな所に引っ張ってきたのは土方の失態であり今のこのうんざりした気分はいわゆる自業自得だったので、ひとつ溜め息をついた。

服従を引き換えに刀を与えられた我々には、ある一定の間隔を置いてそういった波が来る。
この餓鬼めと思ってしかし土方は、沖田の代わりに彼がその右手へぶら下げた刀を取り上げて鞘へと仕舞ってやった。救いは仕事がもう既に終わり、今日は返り血ひとつ互いに浴びなかったことである。

「護るべき国っていうのはなんですか」

真っ直ぐに目を見て沖田は言った。同じように目を見て、「お前がしているのは近藤さんを護ることだ」と返事をした。「お前が嫌なら国なんぞ、護らなくていいんだ」とも話した。そういう言葉を望まれて縋られたのを知っているので、土方はそれから頭を撫でてやる。弟分はすると飼い主に触られた猫のように目を瞑り、うんと小さく返事をしたのであった。





不条理に目を瞑ることを子供へ教えるのは、卑劣な大人が一番してはならないことのように思えた。
そんなやりとりがあり、妙に厭世的な気分になったため、ごみだらけの町で沖田と別れた午後からのオフは怠惰に過ごすことと決める。

土方の中で怠惰の象徴といったらそれはもうひとりしかおらず、両手をポケットに突っ込んだままカンカンとその階段を登っていくとがらり、戸が開いて子供がふたり出て来た。あの男が面倒を見ている、沖田よりも随分幼い男女の子供だ。
そのうちの眼鏡をかけた方がこちらの姿を見止めて行儀良く頭を下げる。(こういうものを見るたびに思うが、うちの餓鬼の方は恐らく世間一般に比べるとだんとつで躾がよろしくない。)

「こんにちは。珍しいですね、土方さんがウチに来るなんて。何か御用ですか?」

実のところ、土方の訪問はそれほど珍しいことでもなかった。しかし特に訂正はせずに「あいつは居るか」と尋ねたら、もっと珍しい顔をされた。銀ちゃん変なことに巻き込んだら駄目アルヨと今にも噛み付いてきそうなチャイナ娘を宥める意味も込めて、土方は嘘を吐く。

「ちげーよ。報酬が未払いだのどうのって喚いてたから払いに来たんだ。後々まで引っ張られちゃ面倒だからな」
「本当ですか! あ、……こほん。 ええと銀さんだったら奥で昼寝でもしてると思うんで、適当に起こしちゃってください。僕等これから別の依頼があって失礼しちゃいますけど」
「構わねーよ。気を付けて行って来な」

眼鏡の少年は、もう一度会釈をした。チャイナ娘の方は「トッシー、もうあんまりフィギュアにお金つぎこむなヨ」ととんでもない労りを寄越してそれを追いかけて行く。

(……最悪だ)