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遠野 真澄
遠野 真澄
novelistID. 10989
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A cielo che avvolge una nube

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1.
「・・・あいつらに会うのも、何年振りだろうな」


太陽が完全に登り切っていない頃、黒帽子に黒服の出で立ちをした2等身の子ども・・・いや、赤ん坊はとある一軒家の前で小さくその口元に笑みを浮かべた。
人通りも少ないが、朝錬のために通学路を走る少年が通る頃には、その赤ん坊の姿はどこにもなかった・・・・・・。



――――― ごくごくありふれた、朝の風景。
この日を境に、とある少女の日常が急変した。
その変化は、少女やその周辺に大きな影響を及ぼす。
だが、そのことを知るのはこの街にやってきた一人の赤ん坊のみであった・・・・・・。


極東と呼ばれる地域にあるとある国、日本。周りを海に囲われ、独自の文化が今でも色濃く残る国である。
そんな日本にある地域、『並盛町』という名の地区があった。
その名から、まるで牛丼の種類かと思われがちだが、列記とした町の名前である。
そんな並盛町の住宅街にある可愛らしい外観の一軒家では、ごくごくありふれた日常が繰り広げられていた。
早朝より家事に追われている女性は、朝食を作り珍しく起きてこない愛娘を起こしに2階にある娘の自室へと向かった。
愛娘の部屋はいたってシンプルで女の子の部屋には見えないが、一角を陣取るぬいぐるみたちが唯一の女の子らしさであろう。
壁側に設置されている小さなベッドに、一組の寝顔が仲良く布団に包まっていた。

「あら。 今日は、恭君も来ていたのね。 少し、多めに作っておいて正解だったわv」

女性は、同じベッドに男女が寝ていることに驚くことなく、嬉しそうに微笑みながら娘を起こすことなく、リビングへと戻るのだった・・・・・・。
女性の気配がリビングへと移動した頃、それまで動くことのなかった少年が静かに覚醒した。
彼は人の気配に敏感で、現在腕の中にいる人物以外の気配があると、すぐに目覚めてしまう習性があった。
少年は傍にある時計を確認すると、起きなければならない時刻を指しているために腕の中で幸せそうに熟眠する少女を起こしにかかった。

「ツナ、起きて。 朝だよ。 奈々が起こしに来たから・・・起きないと、大目玉だよ」
「ん?・・・・。 きょう・・・ちゃ?」
「うん。 僕もそろそろ起きないといけないからね。 ・・・今日、服装検査ってこと・・・忘れてないよね?」
「う?・・・。 ・・・起きる」

少年は微笑みながら優しく少女の肩を揺らしながら、彼女の覚醒を促す。
そんな彼の仕草に不満そうに声を上げるが、不定期に行われる抜き打ちの「服装検査」に反応したのか、漸く今も尚襲ってくる睡魔から逃れた。

「おはよう、ツナ」
「おはよう?、恭ちゃん」

少女は起き上がると、自身の頭を優しく撫でる少年に抱きつき、チュッと頬にキスを落とす。
そんな少女に驚くことなく、少年もまた少女の頬にキスを落とした。
それは、彼らにとっての日常である。彼らは物心の付く前からの幼馴染で、常に行動を共にしていたため自分たちの行動に対して、何の疑問も抱くこともない。

「さて・・・と。 ツナも起きたことだし・・・奈々も待っているから、行こうか」
「ん。 ・・・なんか、嫌な予感がするなぁ」

2人は同じ部屋でそれぞれの制服に着替えると、静かに階段を降りてゆく。
変わらない日常ではあるが、少女は一瞬だけ過った違和感に対し、小首を傾げた。

「お前の超直感も相変わらずだな、ツナ」
「この声は・・・リボーン!」

階段下から聞こえる声に、反応した少女は階段を駆け降りた。
少女は視線を足元に落とし、廊下に両膝をついた。
少女の目の前には黒帽子に黒服の出で立ちをした赤ん坊であった。

「チャオッス! 元気そうだな、ツナ。 ヒバリも相変わらずだな」
「久しぶりだね、赤ん坊。 君に会うのも・・・何年ぶりになるのかな」
「ツナがこっちに引っ越す1年前だったからな。 4年ぶり・・・だな」

赤ん坊は小さな片手を少女に向けながら挨拶し、ゆっくり降りてくる少年にも声をかけた。
赤ん坊が普通に二足歩行し、普通に喋っていることに対して何の疑問を抱くことなく、優雅に階段を降りてきた少年も軽く挨拶を交わした。
少年の言葉に対し、赤ん坊はニヤッと小さな口元に笑みを浮かべると、彼らと別れた年数を数えた。

「ツーちゃん? やっと起きたの? あら、リボーン君じゃない。 いつ、こっちに?」
「久しぶりだな、ママン。 さっきだぞ。 今日から、ツナの家庭教師をすることになった」

廊下から聞こえる娘たちの声に、朝食を準備していた女性は、リビングから顔を出した。
視線の先に娘と息子同然の幼馴染の少年と赤ん坊に、女性・・・沢田奈々は懐かしそうに赤ん坊の名を呼んだ。
奈々の声に対し、ニッと笑みを浮かべた赤ん坊・・・リボーンは軽くい挨拶を交わすと、自分がこの沢田家に来た理由を告げた。

「あらあら。 ・・・それじゃあ、あのお話が・・・現実になるのね」
「大丈夫だぞ、ママン。 ツナは俺がみっちり鍛えるからな。 それに、ママンの安全も万全だ」

そんなリボーンの発言に軽く目を見張った奈々は、以前夫とその上司に当たる人物から聞いた言葉を思い出し、悲痛に満ちた笑みを浮かべた。
そんな彼女の心情を理解しているリボーンは、自信満々に任せろと胸を張り、周囲の安全も完璧だと告げるのだった・・・・・・。




平穏な日常が過ぎ、下校時間に差し掛かった頃一人の少女は無人となっている特別棟の最上階にいた。
この階には少し離れたところに図書室と音楽室があるが、下校時間にもなると人気が極端に少なくなる。
また、その二つの教室は両端に位置しており、中央付近はこの学校に通う人間にとっての鬼門となっているのだった。
その場所とは、応接室であり本来ならば来賓室として学校の威厳の証を他校の関係者に見せつける場所であるのだが、この学校・・・並盛中学校では特殊で、風紀委員会が陣取っていた。
表札には「応接室」と書かれているが、実質使用しているのは、風紀委員長室と化している。

少女はキョロキョロと一度周りを見渡し誰もいないことを確認すると、静かに応接室のドアを開いた。

「いらっしゃい、ツナ。 今日の紅茶は、ルフナ紅茶だよ」
「恭ちゃんが入れてくれたお茶は、どれも美味しいから」

窓側の位置を占領している大きな机の上で、一般の会社員並に机の上に積まれた書類を決裁していた少年は、唯一傍にいることを寛容している少女の気配に顔を上げ、彼女限定の笑みを浮かべた。
そんな少年の柔らかい表情にニコニコと頬笑みを浮かべた少女は、きちんとドアを閉め、彼女の特等席と化している中央のソファに座った。
彼女の来る時間は予め決まっているため、その時間に合わせて決裁していた少年は、最後の一枚にサインを入れるとすぐさま少女に近づき、軽く彼女の頭を撫でるとそのまま学校側に働きかけて造らせた給水室へと姿を消した。
硝子戸棚にはウェッジウッドの茶器一式が揃っており、ティーカップセットは、2つあった。
また、茶葉も飲み方別に3種類別にストックされている。