A cielo che avvolge una nube
1激目を凌いだため勝てると思ったのか、内ポケットに隠し持っていたダイナマイトに点火させ雲雀に向けて放つ。
中距離を得意とする獄寺だが、室内のため範囲が限定されてしまう。
そのため、先手必勝とばかりに鎮火させる瞬間を狙って懐に飛び込もうという目論見だったが、
そんな考えを読んでいた雲雀は横一線にトンファーを振るうと発火部分はもとより導線そのものが寸断された。
「こんな玩具で僕を倒せるとでも? 舐められたものだね・・・。
(コレにはあの子が世話になったし・・・強制的に意識を刈ってあげるよ。 痛みが少しでも長く響くように・・・ね?)」
「十代目と同じ・・・だと!?」
ツナと同じ方法で消されたことに驚きを隠せない獄寺は次の攻撃を仕掛ける間もなく、
懐に飛び込んできた彼をカウンターの要領で2発ほど打撃し、ソファーに向けて吹っ飛ばす。
一撃が重い雲雀の攻撃に、痛みを感じながら意識が沈んでゆく。
「獄寺ッ!! ・・・てめぇ!!」
「・・・一匹。 次、行くよ」
気を失う獄寺に驚愕した表情を浮かべた山本は、その犯人である雲雀を睨みつける。
その視線に以前リボーンから調査を依頼されたターゲットであることを認識した雲雀は、
平常時には程遠いものの幾分か冷静さを見せる山本に少しは楽しめると冷笑を見せた。
最初は軽い攻撃から仕掛け、徐々に速度を上げてゆく。
元々動体視力の良い山本は全ての攻撃に順応・対処することで一撃も喰らうことなく全て見切った。
そのことに、本人は気づいていないものの血筋のなせる技だと最終判断した雲雀は、
この茶番に終止符を打つべく、山本の腹部に強烈な蹴りを叩きつけるのだった・・・・・・。
「・・・二匹。 やっぱり、呆気ないものだね」
「・・・恭ちゃん、これどうするの? 私は運べないよ」
「君がこいつらを運ぶ必要はないよ。
当分起きないようにそういう攻撃したから・・・後は風紀委員に命じて、校舎の外に運ばさせる。
だから、ツナはここでゆっくりしていきなよ」
「・・・目覚めないにしても、運ばれてから・・・ね?」
「・・・わかったよ。 そこに転がってる奴らも一緒に運んでもらおう。
コイツらが相手だったとしても、こんな弱いようじゃ剥奪しようかな」
意識を失った山本に対し、興味が失せた雲雀は気を失っている2人に冷徹な視線を一度だけ向け
使用した得物を所定位置に戻す。
与えたダメージは大きいものの、外傷がほぼない状態に呆れた表情を浮かべたツナは、2人の回収にため息をついた。
そんな彼女を優しく腕を引き、自身の腕の中に囲うとお気に入りの髪に頬を埋める。
触れてくる優しい手は、先程までツナ的には最低限の手加減をされてはいるものの、
一般的に容赦ない攻撃を喰らわさせていた人物と同一人物とは思えない。
ツナの苦言に渋々腕を離した雲雀は、自身の携帯から腹心である副委員長に運ばさせる人数を数人寄越すよう命じた。
「草壁さん以外が来るのなら、私は隠れていたほうがいい・・・かな?」
「人数は伝えているから、僕も一緒に給湯室にいるよ。
あの2人がここに来ることは、草壁にも事前に伝えてあったからツナがここにいることも知っているだろうしね」
「・・・私の情報を流している人物がまだ判明しない今、油断はできないわ。
いくら彼らが隣町に引っ越してくるとはいえ、私の地盤はまだ磐石じゃない。 隠し事をしている身だから何とも言えないけれど」
雲雀が電話口で命じる声を静かに聞いていたツナは、自分たちの関係を知らない人間が来るのではと危惧し、
入口と倒れている彼らから死角となる給湯室に身を隠すことにした。
今はツナを自分の傍から一時も離したくない雲雀は、彼女の肩を優しく抱き寄せながら給湯室に向かい、
改めて背後から腹部辺りに腕を回して軽く拘束する。
そんな彼に対し、拒絶をするどころか微笑を浮かべると軽く体重を預けるのだった。
「まぁ、僕としては“その時”ではないにしろ、僕以外の男が我が物顔で君の傍にいることが気に入らなかったんだ。
そのことでもイライラが溜まっていたから、少しとは言え発散できてよかったよ。
獄寺隼人・・・。 父親がマフィアのドン・・だっけ? 血筋的にも潜在能力はそこいらの雑魚よりは強いと思うよ。
いろいろと足りない部分が多い上に、僕以上に忍耐力が欠落しているけど。
山本武については、あれだね。 情報としては確信があったけど、今回のことで確定だ。
動体視力の向上に関しては、スポーツに打ち込んだ成果だろうね」
「・・・だから言ったのに。 恭ちゃんの満足するレベルじゃないって・・・。
恭ちゃん、彼らとほぼ互角に戦うだけの実力と戦闘力を持っているのよ?
平穏な日常を送る山本くんはもちろん、そんなに激戦区で戦ったことのない獄寺くんが叶うはずないじゃない」
辛口評価する雲雀に対し、仕方がなさそうな笑みを浮かべたツナは宥めるように自身の肩に乗せる彼の頭を優しく撫でた。
暫くすると、雲雀の命令を忠実に守った腹心が向かわせた部下たちが気を失っている男たちを回収し、
静かに退出していった・・・・・・。
――――― 我が道を突き進む《Nuvola(雲)》。
何ものにも捕らわれることはないが、唯一自ら腕を伸ばし求めるものはすべてを包み込む《Firmament(大空)》。
その柔軟性と包容力が諸刃の剣になるのを防ぐため、
自らの力を持って向上する余地のある天候候補たちに《sfida(試練)》を与えた。
最愛の《Firmament(大空)》を守るために、自らの命をも守らせるために。
正式な自己紹介をするその時までに、自分たちの弱点を克服できるように・・・・・・。
作品名:A cielo che avvolge una nube 作家名:遠野 真澄