A cielo che avvolge una nube
山本の案内で人気のない応接室一角にたどり着いた3人は、それぞれ首を傾げた。
山本は呼び出しにも関わらず人の気配がないことに対してであり、獄寺はイライラによる状況判断の低下を招き、
ツナといえば婚約者から聞いた放課後のスケジュールを思い出していた。
(・・・今日って、委員会の話し合いがある日じゃなかったかな?
どこかの委員会が懲りずに群れて恭ちゃんに楯突いてたら・・・今頃返り討ち・・・かなぁ。
基本的に、私は平和主義だけど・・・博愛主義じゃないわ。
彼の性格などそろそろ把握していてもいい頃合なのに、それでも甘く見ている人に慈悲なんて必要ないわね)
「中で待ってようぜ?」
「や、山本くん!? ちょ、ダメだよ勝手に入ったら!(自分からフラグ立てないでよ!)」
「お邪魔しまーす」
深く考えることをしない山本は、躊躇いもなく関係者以外(一部例外あり)絶対不可侵の領域へ無断で侵入するのだった・・・・・・。
「へー、中はこんなんだったんだな」
「っち、この俺を呼び出しておいて誰もいねぇのかよ。 さっさと帰りましょう、十代目!」
3人の入った応接室はやはり無人で、さっと中を確認したツナはあまりの用意周到さに内心呆れていた。
相変わらず山本はのほほんとした笑みを浮かべながら見渡し、空いている窓から放課後特有の声が聞こえる。
そんな彼とは正反対に不快感とイライラがMAX状態の獄寺が悪態を付き、ツナは早々に事態の傍観態勢に移行する。
(見た感じ、重要に該当する案件や割れ物系は綺麗に直されている・・・か。
まぁ、範囲は限定されるだろうから被害はそんなに酷くないはず。
・・・それより、山本くんはともかく獄寺くんは外の気配に気づかないのは問題よね)
近づく気配に反応したツナは瞬時に彼の行動パターンから予測される安全圏を計算し、怪しまれない程度に移動した。
「お前たち、ここで何をしている!」
ツナの移動と同時に大きな音を立てて応接室のドアが開け放たれる。
中にやってきたのは風紀委員特有のリーゼントに学ランという昔懐かしの典型的な不良の格好をした風紀委員5人だった。
「誰に断って、ここに入った」
「あ、すんません。 呼び出し、受けたんですが誰もいなくて」
「ここは、俺たち風紀員会の部屋だ。 関係者以外無断での立ち入りは遠慮してもらおうか」
「はぁ? 呼び出したのは、そっちだろうが」
こちらを睨みつける風紀委員に対し、山本はニカッと笑みを浮かべながら経緯を簡単に説明する。
そんな彼に対し不快だとばかりに顔を顰めながら軽く舌打ちをする風紀委員に対し、
既に不機嫌が臨界点突破している獄寺が噛み付いた。
(・・・見覚えない・・・か。 まぁ、私が直接会うのって基本的に草壁さんや一部の口の硬いメンバーだけだものね。
彼らは小手調べ程度ってことかしら。多方、彼の強さに惹かれて心酔しちゃってる面々?)
「口の利き方もなっていないガキが。 さっさと立ち退いてもらおう。 出てゆかないのならば・・・痛い目にあうぞ」
「ガキって・・・1、2歳しか違わないのな!」
「風紀委員がどれだけこの学校で幅を利かせているのか知らねぇが・・・イチイチ人に指図すんじゃねーよ。
目障りだ。 お前らがきえろ」
「んだと? 調子に乗りやがって! 風紀委員に逆らうか!?」
ツナは終始黙ることで傍観者に徹している間、両者とも感情が高ぶってきた。
応接室が風紀委員会の使用する部屋だということは、確定されたことであり事実である。
そのため、無断で入った2人(ツナは、主である雲雀より許可済)に非がある。
暴言を吐きながら実力行使を匂わせる風紀委員に対し、笑みを消し去って真顔になった山本が抗議した。
古風な格好や老け顔のため忘れがちになるが、彼らも現役の中学生である。
同年代に言われる筋合いはない。
獄寺は転校生であるが故に、並盛の特殊性を未だ理解していなかった。
そのため、並盛における風紀員会の持つ権力を知らない。
最も、彼の場合知っていたとしても同じ行動をとることが予想される。
より一層柄の悪さを醸し出した獄寺は威嚇するように睨みつけ、低い声で呟く。
そんな彼の態度に普段から沸点のい低い下っ端の風紀委員が挑発に乗らないはずがなく、顔面に向かって拳を振り上げた。
(・・・頭に血が上っているとはいっても、相手の力量も測れないようじゃダメね。
自分の力を過信しすぎていると命取りになるわ。 まぁ、この学校ではそれが学べはしないわね。
基準がどうなっているかは知らないけれど・・・普通のチンピラよりは強いもの)
表面上は怯えた表情を浮かべながらも冷静にそれぞれの力量を観測したツナは、
彼ら相手では最愛の彼が求める結果は得られないと溜息を吐く。
彼女が願うのは彼らの無事ではなく、最愛の彼が齎す被害が最小限に抑えられることであった・・・・・・。
ツナが考え事をしている間、5人の風紀委員は2人に伸され戦闘不能となった。
外見的に外傷は見当たらず打ち身などで意識のみを刈り取ったことを物語っている。
「・・・フン。 番犬の役にも立たないね・・・。 獄寺隼人に山本武・・・だね」
5人が床に伸び、2人が一息をついたタイミングを見計らったのか入口に寄りかかり鋭い視線を2人に向ける。
彼自身、試練を与えるのは2人のためあえて最愛の半身の名は呼ばなかった。
「アイツは・・・雲雀恭弥」
「あぁ? お前もコイツらの仲間か」
「獄寺、待てッ!」
暴れてスッキリしたのか、先ほどより冷静さを取り戻した山本は現れた人物に目を見張った。
最も、彼がこの応接室の主であるため彼がこの場にいるのは何ら不思議ではないのだが。
また、未だ頭に血が上っている獄寺が無謀にも突っかかってゆく。
さすがに並盛の住人である山本が拙いと獄寺を止めようとするものの、
時すでに遅しで彼は雲雀の射程範囲内に侵入してしまったのだった。
「大体、何が風紀委員だ。 てめぇらの髪型とかがよっぽど違反じゃねーの。 そんな奴らに、とやかく言われる筋合いはねぇよ」
「僕の学校で、景観を損ねるモノは・・・なんであれ許さないよ」
イライラの原因である服装検査を思い出したのか、舌打ちをしながら雲雀に対し殴りかかる。
そんな彼を軽く交わしながら、この場にいる人間ではツナのみに見える軌道で振り抜く。
持ち前の反射神経で一撃を喰らうことなく避けたものの、風圧により前髪が数本散った。
「あれは・・・仕込みトンファー!? ・・・聞いたことがあるぜ。
ヒバリは、気に入らない相手がいると相手が誰であろうとそのトンファーで滅多打ちにするって・・・」
「・・・僕は、弱くて群れる草食動物が嫌いだ。 視界に入れると、噛み殺したくなる。
(・・・それに、こんなヤツがあの子の傍にいるのは・・・不愉快だな)」
「てめぇの好みなんて、知らねぇよ。 てめぇが果な!!」
目を見開く2人が見たものは、片手に握られた銀色に光る得物・・・改造済みの仕込みトンファーだった。
睨みつけるように目を細めた雲雀は、先ほどよりも速度を上げ、獄寺に襲い掛かる。
作品名:A cielo che avvolge una nube 作家名:遠野 真澄