2人のストーリー
沖田は近藤よりも年下なのに、どうしてこんなにキスが上手いのか。確かに美青年ではあるし、モてるもんなあなんて考えると、それはそれで腹が立ってくる。
「ぷはっ…!」
「これで、分かってもらえやしたかねィ?」
ようやく唇が離されたかと思うと、眼前にはにやりと笑う沖田の表情。こんなにも良い笑顔の彼をひさびさに見た気がする。
「分かったって、何をっ?!」
「俺がアンタを好きだってことをです」
「…んなことっ」
本当は最初から沖田のベクトルは近藤を向いていて、それに近藤が気が付けなかっただけだと言うこと。今更のようにそれを思い知らされて、近藤の顔は更に赤くなる。
「恥ずかしいこと言うなよっ!」
「だってアンタ、これを俺に言って欲しかったんでしょう?」
沖田の言葉に近藤は喚くが、それでも沖田は言葉を続ける。
「アンタ、俺のこと好きなんでしょう? だからここのところずっと機嫌が悪かったんでしょう?」
「んなっ…!」
そう、その通りなのだ。土方とのあれを見せられて以来、近藤の機嫌が悪かったのはその所為。そしてそれが沖田のキス一つで直ったのも、まさしく。
綺麗な顔でにこりと笑う、それはまさに天使の様だ。見た目は天使でも、中身は悪魔だが。
「大好きですぜ。近藤さん」
「……そうご」
俺も、とは思いはしたが。恥ずかしさでそれは口に出来なかった。もっとも、言わなくても沖田はその事実をとっくに知っていた訳だが。