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エゴイスト達のシグナル 1

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受験を選ぶのなら、車は今年限りで卒業し、入試に備えて勉強三昧な一年になる。
逆に車を取るなら、大学にはいかないつもりだ。

父の後継者は兄のイシューがいるし、父本人からも好きな道に行っても構わないと言われてもいるが、親や親戚、それにイシューの本心は進学を望んでいるとも判っている。
誰だって大切な家族を、あえて死亡率が高い危険なレーシングの世界になど、送り出したくないだろう。

進路を最終決断する猶予は後僅か。
多分来月……12月末までがリミットの筈だ。


目を閉じ、うとうとまどろみながら数分後、眠りの世界に足を踏み入れたのだが、……運命の11時30分。
鼓膜が破れるかと思うぐらいに轟く爆発音がいくつも鳴り響いた瞬間、留依が飛び起きる間もなく床が大きく揺れた。

「……くっ、な、何だ……、うわっ!?」

次々と天井から崩れた瓦礫が落ち、恐怖に身が竦む。
ひっくり返るような衝撃が走って、一瞬……我に返ると、無我夢中で天蓋ベッドの柱にしがみついたが、それも直ぐに斜めに倒れてきた。

それ以降暫く記憶が無い。
ただ目覚めた時、自分はベッドの上でイエスのように仰向けに磔られており、ベッドの細い柱と天井からの落下物に、あお向けのまま押さえつけられ全然身動きが取れなくて。
何が起こったか判らず、でももしこれが天井のないベッドだったら、きっと瓦礫に押しつぶされて死んでいただろう事実に青くなった。

こくりと唾を飲み込む。

下手に動いて天蓋ベッドの柱が折れたり、複雑怪奇なパズルのごとく、柱に絡まり乗っかっているコンクリートの瓦礫が更に崩れれば……、確実に圧死だ。

「……誰か……、誰か!! 俺を助けてください、だれかぁぁぁ!!」

恐怖に引きつった喉では、ろくに声なんて出やしなかったけれど。
振り絞り、何度も何度も涙目になって叫んだ。
だがここは最上階のスイートルーム。
しかも凄まじい揺れが来たのは、宿泊客がチェックアウトし、各部屋に清掃員が入る……つまりホテルに殆ど客の居ない、入れ替わりの時間帯。

「……誰か、誰か……、誰でもいい、助けて……!!」

呼べども叫べども、助けなど一切来ない絶望的な状況の中、瓦礫の海の中を掻き分け、むき出しの倒れた鉄筋の障害物を掻い潜り、必死でこっちに向かってきてくれたのが、銀色の髪の小さな天使ただ一人だった。