二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
みっふー♪
みっふー♪
novelistID. 21864
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

おじちゃんと子供たちのための不条理バイエル

INDEX|22ページ/22ページ|

前のページ
 
「わうわうっ!」
――ちょっとぉ何それそんなの納得いかないよ! 憤慨したわんこは悪友の着ぐるみに相談しました。
『……』
しばし考え込んだのち、着ぐるみはさっとプラカードを出して答えました。
『良かろう、この薬を使えばお前は代償にわんことしての鳴き声を失うことになるが、王子様の傍で永遠に暮らすことができる』
「わふっ!」
わんこは着ぐるみにもらった特別の錠剤を持って、港に停泊中の王子様の新造宇宙船に乗り込みました。物陰でちょっとうえってなりながら錠剤を舐めてしばらく経った頃、
「にゃんこー!!」
わんこ(?)を見つけた王子様が甲板の上をきゃっきゃしながら走ってきました。
「にゃーんっ☆」
王子様に顎の下をナデナデすりすりされて元・わんこは喉をごろごろしました。
――ってナンかちがーーーっっっう!!!
にゃんこではなくわんことして王子様に愛されたい元・わんこは、ぶっとくりりしい眉を顰めて微妙な気分に陥るのでした。(CASE2)


「わふわふっ!」
――だからそうじゃなくってぇーー!!!
立ち上がってぶるっと頭を振ったわんこは、森のさらに奥深い場所の掘っ立て小屋によく出入りしているまほうつかい(←山草摘みに来ているだけの好事家)の先生のところへ出かけて行きました。
「わうわうわうっ」
かくかくしかじか、わんこが事情を説明しますと、
「――なるほど、」
獣語の研究にも多少精通している先生は、ぽんと手を打ち、にっこり笑って言いました。
「では、キミが人間の姿になれる薬を作ってあげましょう」
もちろんお代なんかは頂きませんよ、臨床実験も兼ねてますからね、先生はさらっと大事なことを言いましたが、わんこは浮かれていたので耳に入りませんでした。
「……さぁっできました!」
炒って叩いて磨り潰して煎じて煮詰めた謎の液体を小瓶に詰めて、先生がわんこに渡そうとしました。
「わうっ!」
――先生ボクにはフタが開けられません、前脚を振ってわんこが言いました。
「おやそうでしたね」
先生はテヘッとおでこをぶつふりをしました。
「ではここで飲んでいきますか?」
先生が小瓶の蓋を緩めて平らなお皿に中身を注いでくれました。――フンフン、鼻先を近付けてみてわんこはまたうえっとなりました。ものすごく苦くてマズそうな匂いです。
「――、」
だけどどうしてもニンゲンになりたかったので、わんこは頑張って皿をひと舐めに飲み干しました。
「?!」
――ほわんほわんほわん、たちまちわんこの周囲に白い煙が立ち込めました。煙が晴れると、わんこはずいぶん目線が高くなったのを感じました。
「やりましたね! 大成功です!!」
鏡を出してきて先生が言いました。いそいそ鏡を覗き込んで、――んっ? わんこは瞼が半分締まりなくだらーんとなりました、ってゆーか元からそういう顔でした。
「……」
――うーんコレはちょっとどーなんだろーか、わんこは首を傾げて天パの後ろ頭をぼりぼりしました。
「気に入りませんか?」
先生が長い髪を傾げて訊ねました。
「わふわふっ!」
――できれば違うタイプでお願いします、わんこは正直にクーリングオフを申し出ました。
「コレがダメだとすると、今のとこすぐ作れるのは私モデルのやつしかないんですけど……」
――それでも構いませんか? 先生が重ねて確認しました。
「ぅわふ……」
わんこはがっくり項垂れました。それはそれで問題がややこしくなりそうだと思いました。
「わふっ!」
――イイですそんじゃ機会を改めてまた来ます! わんこはぺこりと頭を下げ、片袖着流しに木刀を提げ、ライダースーツのインナーにたかたかブーツを鳴らして先生の研究小屋を出て行こうとしました。
「あっ待って下さい、」
急いで追い掛けて来た先生が、カラメルの尋常でなく焦げすぎたやつみたいなどろどろの液体が乗っかった小皿を手に言いました。
「これが解除薬の方です」
「……」
わんこはまたうぇぇとなりながらにがぁいお薬を飲まなければなりませんでした……。(CASE3)


「わうわうっ!!」
――もういいヨ! ボクは誰にも頼らない!! 自分の力でなんとかするよ!!
わんこは港で進水式を済ませたばかりの王子様の新しい船を目指して猛然と駆けて行きました。
出航を明日に控えた王子様とおじさんが堤防で呑気に釣りがてら歓談していました。
「わうわうっ! わふっ!!」
わんこは王子様に向かって身振り手振り尻尾振り、懸命に気持ちを伝えようとしました。
「何か君に言いたいことがあるみたいだけど……」
さっきから空振りばかりの竿を上げてグラサンおじさんがぽつりと呟きました。
「おじさんわんこのコトバわかんの?」
早々にバケツを満タンにした王子様が目をきらきらさせて言いました。
「ウンまあ、いやぁ……」
おじさんは照れ臭そうに頭を掻いて言葉を濁しました。「そりゃ、公園の寒い夜なんか、流しの野良公と暖取りあったりもしたからね……」
おじさんは波の彼方に遠い目をしました。
「じゃあ、世話はおじさんにまかせるよ!」
ニカッと眩しい白い歯を見せて王子様が言いました。
「えっ」
おじさんは驚いた様子でした。しかしおじさんの意見がどうであれ、この船でこのわんこを飼うことは王子様の中で決定事項のようだったので、前例もあることですし諦めたように黙りました。
「……まぁ、なかよくやろうや」
おじさんはわんこの背を撫で、擦り切れた半纏の肩を落として力なく笑いました。
「……。」
わんこは何だかおじさんに同情しました。恋敵と一つ屋根の下暮らすことになったというのに、ちっともそんな気にならないのでした。
同じ船で旅を共にするうちに今ではすっかりおじさんに情が湧いて、――そうねぇ、つまとあいじんのぬるま湯の馴れ合いってこんなかしら、眩しすぎるLED電燈の下でおじさんがグラサンをしょぼしょぼさせながら端切れをちまちま縫い合わせて夜なべでこさえてくれたあったかキルトの座布団の上で、夢現にまどろむわんこなのでした……。(CASE4)


+++++