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帝人神様!!折原臨也の場合

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 いくつかある携帯電話の一つを見つめてふいに声が聞きたくなった。教えていないから相手からはかかってこない。
 声を聞きたいなら自分から電話をかけるしかない。
 目を閉じて臨也は反芻する。
(竜ヶ峰、帝人)
 池袋に広がる無色のカラーギャング、ダラーズの創始者。
 埼玉の田舎からこの春、上京したばかりの少年。
 まだ数えるほどしか会っていない。その程度の繋がりだ。
(ちょっとズルかったかもしれない)
 臨也が帝人がダラーズの創始者だと知っているのはその家に勝手に上り込んだからだ。少しコンビニにでも出ていくつもりだったのだろう。スリープ状態でロックもされていなかったパソコンはダラーズの内部、管理者しか入れないページに接続されていた。物理的な完全な証拠。
 本当は帝人を担ぎ出して平凡な少年の顔を剥ぎ取って創始者として対面するつもりだった。
「でも、見ちゃったものは見ちゃったもんねえ」
 臨也は椅子をくるくると回す。
 帝人の家に押し入ったのは矢霧誠二が張間美香にされている執拗なストーカー行為に感化されたからだ。張間美香のやり方は異常だったがその実、綿密で打算的だった。
 全てが付きまとう対象への愛だと口しながら、私生活へ土足で踏みいる。踏みにじる、という表現があっているかもしれない。
 仮初の平和は終わって世界は動き出すのだ。
「あっちも何かあるのは時間の問題だ」
 火種はそこかしこにあると臨也は笑いながら考えたのは別のことだ。
 今日された帝人からの告白。
 震えた声と恥ずかしそうな顔を思い出すとどうしてか臨也の方が顔が火照る気がした。伝染しているのだろうか。再び強く湧き上がる声を聞きたいという欲求。
「もう寝ちゃった? どうだろ」
 パソコンの画面には田中太郎が「今日は用があるので、これで」とチャットに来てすぐにログアウトしている様子が残っている。帝人がネット上で田中太郎と名乗りそしてダラーズの創始者であるのは分かりきった事実。
(問題はこの情報を俺がどう使うか)
 そんなことを思いながら臨也は見ていた携帯電話とは別のものを操作する。ワンコールで繋がった。
「お疲れ様。今どうしてるか分かるかな?」
『大音量でアニソンが聞こえるんで、まだ起きてるんじゃないですか?』
「? 自宅に戻ってないの?」
『はい。竜ヶ峰帝人は遊馬崎ウォーカーの家に居ます』
 べきりと何かの音が手の中で聞こえた。見ればボールペンが折れて手が汚れている。
「分かった。今日はもう引き上げていい。お疲れ様」
 にこやかに爽やかさすら滲ませて臨也は指示を出して電話を切る。テーブルに置いた携帯電話を床へ投げ飛ばしておぼつかない足取りで洗面所へと向かう。
 黒く染まった手を洗いながら見る自分の顔の人相の悪さに少し笑ってしまう。
 煮詰められた不愉快を表情にしたのならこうなるのだろうと自分のことながら思った。黒いインクのはずなのに水によって流れる赤。破片が突き刺さりでもしたのか血が出ていた。
「痛くないなあ」
 臨也は首を振る。
「すっごい痛いなあ」
 傷口を爪で抉る。それでも治まりはしない。
「血が止まらない」
 痛みも終わらない。
 皮膚そのものではなく見えない場所が随分と痛い。
 腐っていくかのようだ。水では流し切れないだろう。
 溜め息を吐いて臨也はそのまま眠ることにした。