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このゲームには刺激が足りない

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『次世代ゲーム機、BS?へぇー、携帯型ゲームなんだ』
「んで、こっちが問題のソフト」
『“来るがいい!M&Wの村”?どうしてゲームタイトルまでこうも高圧的なんだろう、海馬君。…カードゲームなの?』
試作段階のソフトパッケージに輝くM&Wの文字に、やはり海馬にとってはゲームと言ったらカードなのかと考える。獏良のその考えは、一部だけ正しかった。

「カードゲームなら、わざわざこんなみみっちいゲーム機でやらなくたって、天下のソリッドビジョンがあるだろ。これは、M&Wのモンスター共をキャラクターに利用してるだけだ」
『え?じゃあ、そのモンスターたちを使って何するの?』
「……コミュニケーションを取る、みたいな…」
『…今、お前の口から恐ろしく似合わない言葉が飛び出した気が』
「ほっとけ!とにかく、こんなゲームを売り出そうという気になった海馬の気が知れねぇ。頭でも打ったか?」
『そんなに酷いゲームなの…?とにかく、僕もやってみるよ』
好奇心に駆られて、人格交代をするとさっそく電源を入れる。KCのロゴマークが派手な演出で現れた後、そのゲームは実に穏やかに始まった。モンスターを登場させるからにはRPGのようなものかと想像していた獏良だが、そんな生易しい予想は早くも粉砕された。


「え……?何これ可愛い」
『ゲーム始めるには、ボタン押すんだぞ』
獏良の呟きをサクッと無視して、バクラはとっととゲームを進めさせようとする。そんなことにまでいちいち触れていては、これから先に進めないらしい。
「でも今、物凄く可愛い死霊伯爵が…」
『早く始めろよ』
なおも言い募る獏良の動揺は経験者としてよく分かるが、バクラは明後日の方向を向いて強引に突っ切った。彼も俄かに信じたくない光景であることは認めるのだ、2頭身にデフォルメされた魔界の伯爵の姿など。
しぶしぶゲームをスタートさせた獏良は、一から始めるのも面倒なためバクラの作ったキャラクターを操作する。ゲーム内のバクラの分身は、本人と全く同じ格好である。ズボンもボーダーシャツも上着も配色も、何から何まで現実の姿と同じだ。

「お前、ゲームでまで全く同じ格好して飽きない?」
『あー。あんまり俺様と似ても似つかないしゲームもかったるいからよォ、パラサイトマインドしてホントの分身入れちまった』
「さっそく何やってるの、お前は!!!通りで僕の言うこと聞かない筈だよ!さっきから勝手にグルグル動いてるもん!」

最初からズルしないで、自分のキャラを作れば良かったんだ!そう怒り電源を切って仕切りなおそうとする獏良を、バクラが慌てて止める。
『待て!セーブしないで電源切ったら、俺様が次にプレイする時ビッグ・シールド・ガードナーに怒られる!』
「知らないよそんなこと!」
『いいからセーブしろって!アイツ、2回目以降から怒り方がドンドン厳しくなるんだよ!』
「僕が心の部屋で寝てる間に、かなりプレイしたみたいだね…」
『時計いじって、イベントやりまくったからな』
「…僕が言うのもなんだけど、海馬君は絶対に人選ミスしてる……」

仕方ないので、きちんとセーブした後に自分のキャラクターを作る。そしてあることに気付いた。
「ねえ、この村の名前……」
『クル・エルナ村がどうかしたか?』
「何でそんな村人全員が煮込まれそうな名前にするの!思いっきり不吉だよ!!」
『俺様の故郷だ、文句あっか』
「ありまくりです…ってあれ?僕は新しく家を貰えないの?」
『2人目以降は、同じ家に住むことになるみたいだな』
説明書を覗き込んだバクラが、伸びをしながら答える。長時間ゲームをし続けて若干疲れているらしい。その答えを受けて、獏良の顔が不満げに歪む。
「えー!ゲームの中でまでお前と同居なんて嫌だよ!」
『……仕様だからそこは諦めろ』
「もうどうせお前が変な力使っちゃったんだし、ついでにその仕様もチートで何とかしてよ」
『…そんなに同居が嫌か?』
「嫌だ」
『即答ですか宿主様…』
恐々と確認したバクラは、呆気なく一刀両断された。彼が心の内で打ちひしがれている間にも、獏良は淡々とゲームを進める。
「村人もお店の店員も、みーんなM&Wのモンスターたちなんだね」
『ああ…』
「ブラマジガールが役場の職員かぁ。やっぱり人気どころは押さえてあるんだ」
『おお…』
「あっ、ダークネクロフィアもいるじゃん!子連れでお店やってるの?偉いなー」
『ふーん…』
「さっきから何なの、気のない返事して。…あ、マシュマロンだ。彼(?)も村人なんだね」
『!!!』

獏良の容赦ない言葉で地味に傷付いていたバクラは、村役場に勤めるブラマジガールにはサイレントマジシャンなる姉がいることや、その姉と配達職員のブラックマジシャンとブラマジガールで奇妙な三角関係が出来ていること、ネクロフィアのデパートの2階では実はネクロツインズが店員をしていることなどは、決して教えてやらなかった。が、宿敵・マシュマロンのこととなれば話は別だ。たとえゲームの中の存在といえど、ヤツはバクラにとって確実に抹殺せねばならないモンスターの1匹である。
ちなみに、他にバクラの抹殺リストに載っているモンスターは、オシリスの天空竜・サイレントソードマン・破壊竜ガンドラなどがある。…決して、決闘で負けた腹癒せからのリストアップではない。多分。

『オイ、そのマシュマロに親切面すんじゃねーぞ!』
「えぇ?親切面って…」
『そのマシュマロ野郎には、とっとと引っ越して村から出ていくように、俺様がコツコツ嫌がらせを継続させてんだよ。何か頼まれても無視しろ、無視!』
「何やってんの大人気ない!」
『村でヤツと擦れ違ったら、タックルしまくれ。それで友好度が下がる。ヤツ宛の手紙やら届け物も、全部開封してから渡してやれ』
「ホント地味に嫌なヤツだね、お前!しかも一応、ネコババせずに渡すんだ…」
『開封済みで渡した方が友好度下がるんだよ。ネコババしたら、届け物頼んできたヤツの友好度が下がっちまうじゃねーか』
「(何だかんだ言って、凄いゲームやり込んでるじゃんコイツ…)あーそうなんだ…。じゃあ、そろそろ出ていくんじゃない?」
『しかしヤツもしぶとくてな、なかなか出て行かねーんだよ…』
「………」
『ヤツは持久戦に持ち込む魂胆なのかもしれねーが、そうはいかねぇ。こっちには最終手段があるんだからなぁ。チートして追い出してやる』
「(最初からそうすればいいじゃないか…)あー、なんか疲れた。もうちょっと寝てくるから、あとよろしく」
『そうだな、ついでにゲームシステム自体に手を入れてやるか』
『どうにもこのゲームには血が足りねぇ。どうせ通信機能使うなら、他村への侵略戦争で領土拡大を狙うシステムとか…他村の住人をまるごと秘宝に変えてこっちの戦力にするとか…』
『なあ、どうだ宿主。これで少しは、このかったりぃゲームも血生臭いミレニアムバトルに近付くってもん……あれ?宿主?』



その後、バクラ専用チートコードによって血生臭いゲームに変わり果てた自社製ソフトを見た社長が、コンクリ詰めにしたリングを東京湾に沈めたのは、また別の話である。