T&J
「それでも、もう一度、頑張ってみようかと思うんだ!」
「――ストーカーと勘違いされるぞ」
「手紙が悪かった。今度は行動で」
「きっと容赦なく殴られると思うけどな」
「……じゃあ、そっと見つめるのは?」
「果てしなくキモイやつだと思われるだけだ」
「どうすればいい?」
「だから、忘れろ!みんななかったことにしろっ!」
ロンはきっぱりと宣言する。
「……できないんだ、ロン。僕には出来ない」
ハリーは困ったような顔で、くしゅんと眉を寄せて相手を見た。
ロンは大げさにため息をつくと、ハリーの癖毛をぐちゃぐちゃにかき回した。
「なんて顔をするんだ、ハリー!でかい体で、鼻水たらして、ちっともかわいくないぞっ!」
両手でハリーの頭を小突く。
「小さな子供じゃあるまいし、そんなことをしてもちっともかわいくない!!――でもそんな情けない親友の顔を見たら、ガンバレとしか言えなくなるじゃないか。……ええい、くそっ!!」
目尻を下げて笑いながら、ハリーは尋ねる。
「応援してくれる?」
「君だからなっ!」
ヤケのように答える。
「相手は最低なマルフォイだぞ!分かっているのか?!絶対にこっぴどく振られて、ズタボロに傷つくからな!」
「――傷つくのはいいんだ。どんな結果で終っても、それはそれでいいんだ……。ただ……」
「ただ、何?」
ロンが覗き込んで尋ねる。
「――ただ、この自分の中にある幸せで苦しい感情がどこに流れていくのか、知りたいだけなんだ。この気持ちの最後を、ちゃんと見届けたいんだ。それから次に進もうと思うんだ」
ハリーはドロだらけで薄汚れていて、泣いて目は真っ赤だし、髪の毛は絡まりひどい有様で、とてもじゃないが、英雄とか選ばれたものなんかじゃなかった。
不器用になにかを確かめるように、ポツリポツリと答える姿は、まだたった14歳のたよりない、どこにでもいる少年だった。
「――なあ、ハリー。マルフォイのことを思うと、どうなるんだ?」
「ドラコのことを考えると、何か目に見えないものを感じるんだ。彼には特別な何かがあるように感じる。――あれはいったい何だろう?ひどくつかみどころがなくて、ふわふわしていて、水面に光が反射するような感じなんだ」
ハリーはそっと半月に輝く月を見上げた。そこにドラコがいるようにつぶやく。
「――いったい何だろう?」