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T&J

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6章 ハリーの親友



誰かが歩いてくる靴音がした。
草を踏みしめて、こちらへとゆっくりと歩いてくる。
あれからかなり時間が経ったというのに、未だにハリーは木の下でまだ転んだままの姿でいた。

葉を揺らして下に垂れた枝を上に上げながら、ロンはそんなハリーを見付けて笑いかけてきた。
いつもの片方だけ唇の端を上げて笑う、彼独特の人懐っこい笑みだ。
「……やあ、もうすぐ晩御飯の時間だけど、どうする?」
ハリーは寝転がったまま、笑い返した。
「お腹空いたけど、起き上がれない」
「足でも折れた?」
「振られたショックで」
ロンは肩をすくめて、首を振る。
「分かっていたはずだろ?相手はあのマルフォイなんだぜ。あいつの性格の悪さは、折り紙つきだ。君は最初から、フラれると思っていたよ」
「ひどい言われ方だなー」
ロンは目を細めたまま、ハリーの横に座り込む。

「あいつ、性格悪かったろ?」
「ああ、最低だった。僕が一生懸命に書いた手紙は目の前で破るし、それを謝らないし、しかも直接手渡ししたのに、僕のじゃないって」
「なんだよ、それ」
「僕が泣いたら、その眼鏡を外した顔を見て大笑いされるし。帰ろうをしたら、途中で転ぶし」
「踏んだり蹴ったりだな、君も」
「からだは痛いし、もうふてくされて、そのままずっと今まで寝っ転がってた。ついでに、「世界中が滅びろっ!」て呪ってた」
ロンはクスクス、おもしろそうに笑う。

「部屋でパズルをしていたら、僕のもとにドウィックが、「君のSOSだ」って、鋭いくちばしでつつきにきたけど?」
「ああ、親友だけには世界滅亡を知らせようと思ってね」
「なんだ僕には、君が失恋して慰めてほしいのかと思ったよ」
ロンはハリーの汚れた顔をぬぐってやる。
「あーあ。涙の筋のままドロが付いて、顔がみごとなストライプ模様だ。こりゃひどいや」
ごしごしと強く指先でほほを撫でて、それを落とそうとした。
「そんなにひどい顔?」
「今まで見たことないほどな」
「だったらフラレるはずだ。僕はブサイクすぎて、フラレました!」
「もうヤケになって、まったく!」
ロンは笑ってばかりだ。

「――泣いたのか、ハリー?」
「いっぱい、泣いた。でももう泣くの飽きたから、君を呼んだ。君に八つ当たりしようと思って」
「何か僕にご不満でも?」
「君が手紙を書けなんていうから、こういうことになったんだ」
「アドバイスしたのは僕だけど、手紙の内容が悪かったのは、僕の責任じゃないさ。いきなり「好きです。付き合って下さい。」は、いくらなんでも芸がなさすぎるぞ」
「じゃあどう書けばよかったんだよ。「君は星だ。太陽だ。僕の天使になってくれ」とか、メルヘンチックなことでも書けばよかったのか?」
「……男相手に、それは気持ち悪い。――っていうか、普通に考えて、男にはラブレターなんか書かないし……」
じろっとハリーはロンをにらみつける。

「まさか、僕のことを「変態だっ!」とか言って、傷口に塩を塗りまくるつもりじゃないだろうな?!」
「ああ、言わない。言わない。たまたま好きになったのがマルフォイで、君はいたってノーマルだ」
はいはいと言う感じで、ロンは仕方なしに相槌を打つ。
「本当に君は手がかかる親友だよ、ハリー」
大きくため息をついた。
「そういうときのための親友だ。楽しいときばかりいっしょにいるのはただの友達さ。君は違うだろ?」
「残念だけど、そうみたいだね」
ロンはまた笑った。

日が落ち、ゆっくりと星が瞬きはじめると、熱を含んだ昼間の空気が少し強い横風に押されて、心地いい温度になる。
どこからか虫の声が響いてきた。
「…………手紙なんか書かなきゃよかった」
ポツリとハリーは言う。その声はどこか細くて震えていた。

「きっとドラコのことだ。手紙を寮のみんなに見せて、笑いものにしたかもしれない。「この僕にこんな下らない手紙よこすなんて、なんてずうずうしい!」とか、言いながら呆れた顔をしたかもしれない。だから破ったんだよな、きっと……」
顔を向けると、ハリーはまぶたを指でこすっていた。
「――もう明日からきっとドラコは僕のところへやって来ない。気持ち悪がって。あんなに毎日、僕の顔を見るとすっ飛んできてくれたのに。嫌味でも、容赦ない毒舌でも、なんでもよかったのに。あの顔でじっと僕のことを見てくれたら、それだけでよかったのに……」
エグッ!という喉からあふれてくる嗚咽とともに、ハリーはボロボロ涙をこぼす。

「手紙なんか書かなきゃよかった。箒から落ちて骨を折ったときよりもっと、痛いことがあるなんて知らなかった」
ロンの前でハリーは自分の感情を隠そうとはしなかった。
「――会いたいよ……。嫌われたくないよ。ドラコに嫌われたくないよ……」
「嫌われたくないって、ハリー。いつも「君が一番キライだ!」って、目の前でマルフォイに宣言されてたじゃん」
「そんなの、ただのドラコの照れ隠しに決まっているだろっ、ひどいぞ、ロン!!」
「ひどいもなにも、事実は事実だからなー」
やれやれとした表情でロンは、ハリーの肩に手を掛けて、地面から引き起こしてやる。

「めいいっぱい傷ついたんだろ?コテンパンにやられて、容赦なく振られた。それでいいじゃないか、ハリー!マルフォイにしては上出来だよ。中途半端な情けが一番つらいからな。とことん振られたら、すっぱり諦めもついただろ?すぐ忘れるさ」
「……諦めきれない」
「もう希望はないんだぞ?夢なんか見るな」
ロンはパンパンと背中に付いたドロやほこりを払ってやる。

作品名:T&J 作家名:sabure