T&J
(ふーむ……。確かにあの捻じ曲がったドラコのハリーへの情熱が、別のコースに曲がったとしたら、それもありかもしれないな!)
パンジーはニヤッと笑った。
おもむろにドラコの両肩をポンポンとたたく。
「なーに心配するなドラコ。わたしがなんとかしてやろう!お前とポッターの関係を修復してやろうじゃないか!わたしが『恋のキューピット役』になってやろう。喜べ!」
「誰が喜ぶんだ、そんなこと!勘弁してくれっ!」
涙目になってドラコは叫ぶ。
「照れるな、ドラコ。わたしは相手が男だとしても、憎っくきライバル寮のグリフィンドール生でも、祝福するからなっ!むしろ嬉しいぞ。お前がやっと誰かを好きなるなんて。親友のわたしが、どんなことをしても成就させてやるからな。自分の大切な親友の幸福を願わないものなどいるものか」
「ちがう、絶対にちがうぞ、パンジー!!お前、気は確かか?いったい誰があいつのことを好きだと言ったんだ。」
「照れて言えないだけなんだろ、ドラコ」
パンジーは極上の笑みを浮かべたまま、ドラコのほほにチュッと音を立ててキスをした。
「――お前の幸せを誰よりも願っているぞ、ドラコ」
「違うといったら、ちがうんだ。パンジー、ちゃんと僕の話を聞けよ」
「じゃあ、お前の謝りたい原因っていったい何だ?」
「……うう……っ。それはちょっと――」
「ほーら、やっぱり!恥ずかしいんだな、ドラコ」
「言えよ」「言えない」の繰り返しで、言葉が堂々巡りして、話がちっとも進まない。
ドラコは今朝からのパニックの連続で、もうヘトヘトだ。
一日中このソファーに突っ伏したままで、ほとんど動こうとしなかったので、水すらまともに飲んでいないし、かなりのすきっ腹だ。
しかも朝のあの激しいマラソンと、信じたくないけれども信じられないくらいのハリーとの快楽……。
ドラコはクラクラと眩暈がしてきた。
ひどい悪夢のような一日だ。
なにもいいことがない。
もう、どうにでもなれだっ!
「だから金曜日は大嫌いなんだ!」
そう叫ぶとドラコは空腹と貧血のあまり、その場に倒れこんでしまったのだった。
■NEXT■