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らぶこめ

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映画に行こう



志摩柔造と宝生蝮は京都の町を歩いていた。
どちらも正十字騎士團の祓魔師としての格好をしている。
正十字騎士團京都出張所から寺へと向かっているところである。
もちろん用があるからだが、緊急の用件ではない。
柔造と蝮は仕事の話をしながら、特に急がずに道を進む。
ふと。
柔造の隣をきびきびと歩いていたはずの蝮が、消えた。
アレ?と思い、柔造は立ち止まる。
あたりに視線を走らせると、うしろのほうで蝮が立ちつくしていた。
蝮はなにかをじっと見ている。
そちらのほうに柔造は近づいていき、蝮が見ているものへ眼をやった。
映画の宣伝ポスターだ。
蝮はそれをじいぃぃぃっと見ている。
つまり。
この映画を観たいんやな、と柔造は思った。
なんてわかりやすい。
「あー」
何気ない様子を装い、柔造は蝮に話しかける。
「なんや、おもしろそうやな」
蝮が柔造のほうを向いた。
表情は無い。
そんな蝮に、柔造はさらに言う。
「今度の休みの日ィに観に行くか?」
次の瞬間、蝮は眼を大きく開いた。
そして。
「ホンマに!?」
顔を輝かせた。
嬉しそうに笑っている。
かなり珍しい。
柔造は驚いた、というよりも、なにかに胸を打ち抜かれたような気分になった。
これがツンデレというヤツだろうか。
ツンがデレる瞬間を見てしまった。
ツンデレってタチが悪いもんなんやな、と柔造は思いながら、内心の動揺が顔に出ないようにした。


作品名:らぶこめ 作家名:hujio