二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

らぶこめ

INDEX|2ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 


休日。
柔造は自宅にいた。
そこに。
「ごめんください」
蝮がやってきた。
だから、柔造は玄関のほうへ行く。
玄関の土間に蝮が立っていた。
柔造は蝮に笑いかける。
「よォ」
だが、蝮はニコリともせず、少し頭を下げた。
それから、蝮は手に持っているものを差しだした。
「これを皆さんで」
菓子折だ。
一緒に映画に行くことに対する礼のつもりなのだろうか。
「ああ」
柔造は菓子折を受け取った。
蝮は真面目な顔つきだ。
大変礼儀正しいと思う。
しかし。
自分としては、いちおう、デートのつもりなのだが。
こんなふうに礼儀正しくされると、なにか違う気がしてしまう。
ほんのわずかな期待すらしてはいけなかったのだろうか……。
そう柔造が感じていると。
「あー、蝮ねーさん!」
背後から明るい声が聞こえてきた。
弟の廉造だ。
バタバタと足音をたてながら、近づいてきた。
そして、廉造は蝮に向かって言う。
「蝮ねーさん、今日はえらい可愛いカッコしてはるやん!」
うきうきした様子である。
それに対し、蝮は戸惑った表情になった。
「あ……、これは、青と錦が、これを着ていけって言うたから……」
蝮が着ているのはワンピースだ。
ひらひらしたスカート部分は膝より少し下までの長さである。
妹ふたりが勧めただけあって、よく似合っている。
けれども、蝮は廉造から眼をそらし、うつむいた。
恥ずかしいらしい。
はっきり言って。
めっちゃ可愛いんやけど。
……そんなこと、ここで言えるわけがないが。
だが、廉造は柔造とは兄弟でありながら違う人種であるらしい。
「妹さんら、グッジョブやわぁ。よお似合てはる。めっちゃカワイイです」
廉造は思っていることを素直に口に出した。
その周囲にハートマークがいくつも飛んでいるように見える。
柔造は眼を細め、眉間にシワを寄せる。
かわいい弟ではあるが、これはどうなのだろうか。
しかし、廉造はそんな柔造の様子に気づかず、蝮に向かって話し続ける。
「あ、せや、このあと、蝮ねーさん、柔兄と映画に行くんですよね?」
「そうやけど」
「俺も一緒に行っていいですか?」
廉造は無邪気そのものの様子だ。
蝮は小首をかしげた。
「ああ、別に、かま」
「廉造」
柔造は蝮の返事をさえぎり、廉造に言う。
「おまえ、まだ覚えとらん経文がいっぱいあるやろ。それ、今から写経して覚え」
「えー!?」
廉造は不満そうな顔を柔造に向ける。
「そんなん、今日せんでもええやん! 明日するから!」
けれども、柔造は廉造の主張を無視し、別のほうに眼をやった。
「金造、コイツつれてって、勉強させてくれ」
部屋から顔半分だけ出して様子をうかがっていた金造に声をかけた。
すると、金造は即座に部屋から出てきた。
「ラジャー、柔兄!」
なんだか楽しそうだ。
すごい勢いで駆けてくる。
「げっ、金兄……!」
「れーんーぞォォォッ!」
逃げ腰になった廉造に金造は飛びかかった。
「うぎゃあああ!!」
廉造は金造に確保された。
「ほら、行くで、廉造」
「……はいはい、わかりましたよ」
しぶしぶといった様子で、廉造は金造に連行されていく。
「あっ、せや、金造」
ふと、思いついて、柔造は金造に声をかける。
「すまんが、これも持って行ってくれへんか?」
蝮から渡された菓子折を金造のほうに差しだす。
「ああ、かまへんよ」
金造は笑って菓子折を受け取った。
さらに。
「柔兄、がんばってや」
そう励ました。
金造には悪気はまったくない。
それがわかっているので、柔造はとりあえず笑っておいた。

作品名:らぶこめ 作家名:hujio