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Da Capo Ⅵ

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祝福の音が聴こえる。
天井から降り注ぐ鈍い光とともに、僕の耳に飛び込んでくる。

(あ…、これは…)

貴方の音だと、はっきり分かる。
澄み渡った空気に乗せて、僕の中に流れ込んでくる。
幸福。
優しさ。
愛おしさ。
そして甘い時間。
一つ一つが僕に語りかけて来て、僕は目が覚める。

貴方の音は僕に真実を教えてくれる。
一つ一つの階段を上る術を、その方向を示してくれる。

分からない時、何時も向かっていた音の流れの積み重ね。
僕はそうやって音の流れを体と心に伝えてきた。

(どれくらいなのか…)

少し考えてみる。

(……)

計算するのも時間の無駄なので止める。
そんな事よりも、貴方の音の存在そのものが重要なのだから。

貴方は、それを飛び越える、いとも軽々と。
僕は再び、その音に身を委ねる為に、瞳を閉じた。

世界にはこんなにも幸せなものがあるのだと、改めて感じる。
そこに貴方がいるだけで、そこに貴方の紡ぐ音があるだけで。

(…僕は、幸せなんです…)

聴こえる枯葉の歌声と、光のダンス。
そして…。

(…あ…)

別の音が混じった。
これは、

(…先輩の…音…じゃ、ない…)

耳を済ませて、注意して聞いてみる。

(…これは…)

綺麗だけれど、貴方の音とは違う。
貴方の持つ「何か」を削ぎ落とした。

(…おと…)

僕はこの音の主を知っている。
この人の奏でる紡ぐ音楽も素敵だと思う。
力強く、無駄がない。
楽譜に書かれている音の動きを正確に捉え、積み重ねた技術によって昇華している。
僕の尊敬する人の、一人。

僕が目指していた「究極の音」。
それに近い、と感じていた人。

(でも、…それは少しだけ違う、と貴方の音を聞いて…気が付かされたんです…)

僕は体を起こし、ゆっくりとその音達の渦へ足を向けた。

作品名:Da Capo Ⅵ 作家名:くぼくろ