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幼なじみロマンス

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ゆっくりと



休日、柔造は蝮と一緒に、仏教の珍しい古文書などが期間限定で公開されている博物館に行き、そのあと、流れで、夕飯を食べに行くことになった。というよりも、自然にそうなるように柔造が誘ったのだ。
行ったのは、落ち着いた雰囲気の店である。
机をはさんで向かい合って座り、食べながら話をした。
仏教の話や、仕事の話、お互いの家族の話など、話は尽きない。
食べるだけではなく、どちらも二十歳をとおに過ぎているので酒も飲んだ。
いろんな地酒の置いている店で、ついつい、いろいろ頼んだ。
そして、柔造がトイレに行って帰ってくると、蝮が眼を閉じて壁にもたれていた。
蝮は眠っていた。

夜空の下を柔造は歩く。
人通りが少なくて、道は静かである。
「……志摩」
蝮の声がした。
「すまない」
申し訳なさそうな、恥ずかしそうな声。
それは背中のほうから聞こえてきた。
柔造は蝮を背負って歩いていた。
店を出るとき、酔って寝ていた蝮を軽く起こしてみたのだが、蝮はぼんやりしていて足元がおぼつかない感じだったので、柔造が背負って帰ることにしたのだった。
背負ってすぐに蝮が身体をくたっと預けてきたのを感じた。
ふたたび眠ってしまったらしかった。
しかし、今、眼がさめたようだ。
「私はお酒に弱いほうやとは思ってなかったんやけど……」
「飲んだの、アルコール度数の高いヤツばっかりやったんやろ」
それに飲んだ量が多かった。
銘柄をいろいろと変えていたせいで、ついうっかり、飲んだ量を意識せずにいた。
そういえば、飲んでいる途中から、蝮は頬を上気させ酔っている様子だったのだ。
だが、蝮がいつもよりも打ち解けた様子で話すので、楽しくて、柔造の気分も盛りあがってしまっていた。
酒があまりまわっていない自分が、蝮が飲みすぎていることに気づいて、途中で止めるべきだった。
「気にせんでええ」
俺が悪かった、と詫びようとして、だが、それが蝮の心の負担を増やしてしまいそうな気がして、結局、別の言葉を口にする。
「おまえひとりぐらい、軽いわ」
明るく言った。
だいたい、それは本当のことだ。
次男として生まれたが、長男が亡くなってからは長男のような立場になり、弟たちを何度も背負ったことがある。
趣味がロッククライミングとキャンプであるため、重い荷物を背負って山を登ることにも慣れている。
蝮を背負って歩く程度なら、楽にできる。
それに、役得やしな。
などと思い、背中にいる蝮からは見えないのをいいことに、柔造は少し笑う。
けれども。
「せやけど……」
蝮は気にしているようだ。
だから、柔造は話を変えることにした。
「そういえば、おまえ、さっき、俺のこと、志摩って呼んだよな」
思いついたことをそのまま言う。
「昔は俺のこと名前で呼んどったのに、最近は全然やな」
この頃は、苗字か、申、と呼ばれている。
申と呼ばれるのは昔からで、ケンカしているときなどに用いられている。
どう呼ばれても別にかまわないのだが、なんとなく気になった。
「なぁ、蝮、おまえが俺を名前で呼ばんようになったんは、いつぐらいからや?」
柔造は蝮に問いかける。
だが、答えは返ってこなかった。
蝮が起きていることはその体重のかけ具合から、わかっている。
返事がないので、柔造は自分の記憶をたどることにした。
蝮が柔造を志摩と呼ぶようになったのは、いつ頃だったか。
そして、思い出す。
「祓魔塾に入塾して、しばらく経ったぐらいか?」
ふたたび柔造は蝮に問いかける。
蝮はやはり答えない。
しかし、その身体が強張ったのを背中に感じる。
柔造は眉根をわずかに寄せた。
もしかして。
「もしかして、そのころ、なんかあったか?」
作品名:幼なじみロマンス 作家名:hujio