Shadow of HERO 6
それに気付いた途端、ジワジワと何かがせり上がってきた。何かに気付かなければいけないと感覚が告げている。目の前の男と虎徹、ただ考え方が似ているだけなのに。
(…いや、それだけじゃない。一致している箇所が2つもある。)
ワイヤーを使うところと戦いの身のこなし、さっきからの既視感はそれだったのだ。
それぞれならともかく、どちらも一致するなんてあり得るのか。考え方も含めたら3つ、もう同一人物と言っても過言ではないと思う。
(まさか……)
ありえない、けれど否定する材料がない。
思考が進むにつれ攻撃は緩んでいた。完全に攻撃するのを止め、物は試しと呟いてみる。
「……オバサン?」
男が息を飲むのが分かった。ではそうなのか、このヒーロースーツを着た人物は虎徹なのか。
「…何も言わないのは肯定と取りますよ。」
「……誰のことを言ってるのか分からないな。」
それは否定していても肯定と同じだった。本当に違うのなら全て無視してしまえばいいのだから。
あまりの驚きに言葉が出ない。聞きたいことは山ほどある、その姿は何なのか、20年前に己を助け出したのは虎徹なのか、ウロボロスを知っているのか…けれど何から聞けばいいのか判らない。
そうこうしているうちに、彼女のヒーロースーツがライトグリーンに輝いた。そして常人ではありえない跳躍をする。
「ま、待って下さい!」
バーナビーも追おうとして気付いた、能力が切れている。
「一体どういうことなんだ…!?」
とりあえずあのヒーローが誰かは分かった。知っている人物なのだし、これから情報を引っ張り出せばウロボロスにだって近付けるかもしれない、確実に1歩前進した。それなのに途方もない暗闇に放り出された気分だった。
作品名:Shadow of HERO 6 作家名:クラウン