永遠の答え
前を歩くこどもたちの群れを見渡し、山登りの格好をした中年の女性が、遅れてやって来たまだ若い女性を振り向いて尋ねる。
「これで全員だよね?」
「それが奥村くんが……まだ橋のところに」
「奥村くん? さっき元気に渡っていたけど……」
「ううん。燐くんじゃなくて、雪男くんのほう……」
「雪男くん?」
女性の大きな声に、こどもたちの中からひとりがパッと振り返る。
元気に山道を歩いていたその足を止める。
他のこどもたちは、その子を残して、はしゃぎ、騒ぎながら通り過ぎていく。
その子だけが、女性たちの会話に耳をそばだてている。
「雪男くん、あの橋が怖くて渡れないらしくて」
「そう……臆病な子には厳しいかもしれないね。こどもには少し高いかも……」
「それで、ふたりで挟んで渡ればと思ったんだけど……」
「でも、私も最後尾を任されているし……」
「そうですよね。でも、どう言っても駄目で……どうしたら」
「困ったねぇ。私も、もう行かなくちゃいけないし……あれっ、燐くん!?」
女性たちの横を、燐と呼ばれたこどもがすり抜けて駆けてゆく。
今来た道を走って戻っていく。
女性ふたりがおおいに慌てる。
「燐くん! 燐くん駄目だよ!! 戻って!」
「どうしよう、先生……」
「私が見に行くから、あなたはかわりに最後尾をお願い。園児たちがはぐれないようにね。私はふたりを連れて戻るから」
「はい!」
まだ若い女性は年輩の女性の言葉に従い、列の最後尾につく。
心配そうに後ろを振り返りながら。