リスティア異聞録 2章
「このアマァッ!驚かせやがってッ!こんなにしちまいやがってッ!畜生ッ!畜生がッ!」
ツヴェルフの亡骸をガスガスと力任せに蹴飛ばす。
「ハイシャニハ、サイダイゲンノ、ケイイヲ?」
ツヴェルフの夢見た世界、誰もが平等で、誰もが騎士道精神を大事して、友愛に満ちた世界。自分ひとり、這い上がって見せれば、誰もが気付いてひとりひとりが気持を切り替えれば、それだけで変わるはずだった世界。
「へっ、アヴァロンの赤い死神だなんて言ったって死んじまえば、ただの小便くせえガキじゃねぇか?」
自分の夢見た世界は、自分の理屈は、自分の中ではとても簡単なものだった。それを夢見ただけ。夢を見ることすら罪か。
「この服の下、どうなってんですかね?」
自分の理屈が、自分以外の人間にとってどれだけ度し難いことなのかを知らなかっただけのこと。
「死体の服なんか脱がして、何が楽しいんだ?」
ツヴェルフの見た拙い夢は罪か?
「まあまあまあまあ……うわぁッ、これえげつねぇや。ライルが無茶苦茶に蹴飛ばすから、肋骨の辺りが青黒くなっててグロいじゃん。あっ、でも、おっぱいちっちゃくてかわいいな。おっ触ってみ? ついさっきまで生きてたからあったかいし」
戦場の道理に従い、戦場に血の虹をかけ屍の山を築いた罪は…
「おい、変なこと言うなよ、死体相手に気持ちワリィ」
積み上げた屍の山に登って夢に手をかけようとした罪は……
「下の方、どうなってんですかね?やっぱ、毛生えてんすかね?」
死して尚愚弄されねばならぬほどに罪深いか…
「おい、やめろ。変な気持ちになってきたじゃねぇか、やっぱ、アヴァロンの女は上玉が多いって言うけど本当ですね……っと……、ちッ、やっぱガキだな。見られることなんか、これっぽっちも考えてねぇや。見ろよ、ボーボーじゃねぇか。ははははッ、しょんべんくせぇガキにはションベンぶっかけてやろうぜって……なんだよ、おい、なんだよ。こんな数字しか名前のついてない女の死体に勃起してんじゃねぇか、おめぇ、ははははッ!マジ、変態だな、ははッ」
戦争は少女の拙い夢すらあざ笑うか……
作品名:リスティア異聞録 2章 作家名:t_ishida