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リスティア異聞録 2章

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翌翌朝、ツヴェルフ達はガラス古戦場に着いた。ガラス古戦場、ルダリエ平原の北東部に位置する、先の戦で激戦地となった不毛地帯である。夜毎、戦死者達が闊歩する忌まわしい土地、しかし、先の戦で作られた砦の数々とログレスの首都へ目と鼻の先に位置することから、この地の奪い合いが行われている。

ツヴェルフ達は激戦地となっている分岐路にそびえ立つ砦へと身を投じてた。砦に篭る敵を捻じ伏せて階段を上がっていく。残すは砦の屋上。この屋上で砲撃指示をしている部隊を倒せば砲撃も止まる。

屋上に出る扉の前、奇襲を警戒して扉の手前から様子を伺うツヴァイ。しかし、屋上はもぬけの空のように見える。十分に様子を見たあと屋上へと出る一行。

「アヴァロン ライオット騎士団 所属 ツヴェルフ隊 ツヴェルフであるッ! 戦意あらば姿を見せろッ!」

と、名乗りをあげると、

「赤い死神かぁ…… こいつはデカい獲物がかかったぜッ」

名乗りの代りに返ってきたのは雷撃であった。ジャッジメントの魔法である。

「ぐはぁッ!」

身体の自由が奪われその場に転がるツヴェルフ隊。声の主が階段室の屋根の上から飛び降りてきた。

「ログレス ランドストーカー騎士団所属 ライル隊 ライルッ! これからてめぇらを気合入れてぶっ殺してやっから、気合入れて覚えとけよッ!」

聖騎士、狩人、狩人、ウィザードリィの姿が見える。ウロウロと機能しなくなったツヴェルフ隊の周りを観察しながら歩き回っている。身体が動くならば、こんな無防備な連中、この大剣で薙ぎ払うのにッ!

ライルと名乗った狩人が一回りして確認したあと、

「全員痺れて動けねぇみてぇだな。赤い死神なんて言っても痺れて動けなければ、あの有名な強襲戦術も出来ねぇしな。どうだ、これ剣でひと突きにするのもつまらねーし殴り殺しにしてやろうぜ。散々、こっちの仲間をぶち殺してくれたみたいだしよぉッ!」

そう言いながらケフィの顎を蹴り上げる。身体の動かないケフィに容赦なく降り注ぐ暴力の雨。ケフィの端正な顔立ちがみるみる歪んでいく。痺れのせいで痛みを感じない中、身体がゆるやかに破壊されていく恐怖は痛みの恐怖の比ではないだろう。これ以上、残酷な殺し方が有るのだろうか?

ガスッ、ゴツッ、ボギッ、ドガッ
ガスッ、ゴツッ、ドガッ、ボゴッ、ビチャッ
ドガッ、ボゴッ、ビチャッ

「やめてッ! 殴るなら私を殴りなさいよッ!」

ツヴェルフは何度も心の中で叫んだが、痺れた舌が、喉が、声を心の外まで届けてくれない。悔し涙が溢れてくる。なぜ、こんなことが出来るの? 絶望に身をよじることすら出来ず、震えることすら出来ず、ケフィを殴る音に耳を塞ぐことすら出来ず、ただただ、突っ伏している永遠にも思える一瞬、それが過ぎたその時、ケフィの声が辺りに響いた。

「ツヴェルフ!あとは、頼んだ……ゾッ!私は、お前をッ!信じてるッ!」

そういって、ツヴェルフにラストワンの魔法をかけた。いち早く痺れのとれたケフィはラストワンの魔法を詠唱していたのだ。ラストワンが成功したのを確認すると、遠のく意識の中、ケフィはこう言った。

「ツヴェルフ……夢を、掴め……」

が、その声はツヴェルフに届くことは無かった。

「ッ!思った以上にしぶとかったじゃねーか。殴ってるこっちの拳が痛えっての。おい、そっちはどうだ?」

「こっちも、もう虫の息ですね。トドメ、刺しちゃいます?」

猫が鼠をいたぶる獣の目になった聖騎士が答える。ウェンディの綺麗な銀髪が辺りに散らかっている。髪を握って殴り続けたようだ。ウェンディの自慢だった綺麗な髪は抜け落ちて、落ち武者のような髪型になっている。

「いいんじゃねぇの? まだ二人居るしよぉ」

その時、鼻が折れて呼吸の苦しくなったウェンディがやっとの思いで口を開くと、そこに細剣を差し込んだ。ウェンディはそのまま絶命した。

「こっちの戦乙女どもは鎧着てるしなー。このまま殴る蹴るしても、なかなか死んじゃくんないんだろうなぁ?」

と、ツヴァイににじり寄りながら言うと他の男共がヒューッと声をあげる。その時、ツヴァイが痺れた身体を無理やり起こして槍をとって立ち上がる。

「きっ……ぞっ……」

ツヴァイは必死に声を絞り出そうとするが声にならない。

「はぁん?何が言いたいんだてめぇ?」

精一杯の力を振りしぼってノロノロと槍を突き出すものの悠然とかわされてしまう。

「なんなんだよッ!てめぇはッ!」

そう言いながらツヴァイの頬を張り飛ばす。

「気が変わった。こいつ、すぐ殺しちゃおう。んー、そうだな。この槍、突っ込んじゃおうかッ」

そう言うと、4人で四肢を抑え込み。一人が槍を片手に持つ。

「戦乙女ってんだから、やっぱり乙女なんだろうなぁ?はじめてにしちゃ、これはデカ過ぎるんじゃねぇの?」

と、下卑た笑いをしている。

せーのッ!
せーのッ!
せーのッ!
せーのッ!

槍がツヴァイを貫いた。

「がはァッ」

皮肉にもこのタイミングで身体に自由が戻ったのかツヴァイが信じられないほどの絶叫をあげる。そして、何度目かのもんどりを打つと、やがて動かなくなった。股から突き刺した槍がメリメリと内蔵を突き破り喉の中途まで貫いたのである。

「今まで自分のことを守ってくれてた槍に処女を捧げたんだ。ちょっと太過ぎて、ちょっと先細り過ぎたかも知れねーけどよぉ、本望だろ?」

どっと笑い声をあげる。

「ッ!貴ッ様らァッ!」

奇襲を受け、身構える間もなくジャッジメントの魔法で身体の自由を奪われ、目の前でツヴァイ、ケフィ、ウェンデイが嬲り殺しにされた。敵は笑ってさえいた。

敗者には最大限の敬意を……

これが騎士道の基本ではなかったのか? こいつらは騎士ではないのか? 戦意を失ったツヴェルフ隊の息の根を止める必要があったのか? 身体の自由が戻ったツヴェルフは吼えることしか出来なかった。

「貴様ら……混沌の王にこの身を捧げてでも殺すッ!」

「ちッ、ひとり残っちまったか? まあ良い。ひとり相手ならなんとかなるだろ?だいたい、てめぇらよぉッ? 戦場でそんな複雑なことしてるから奇襲一発で負けるんだろうがッ!恨むんなら、戦争をチェスかなんかと勘違いしたてめぇのオツムを恨むんだなッ!チェスはオツムの出来を競うお遊びだが、チェス盤ひっくり返すなら赤ん坊だって出来るんだぜッ!」

「誰が……負けたって?言ったはずだ……貴様らを殺すとッ!まだ負けてないッ!臓物、ブチ撒けろ!オラァッ!」

ツヴェルフは大剣を構え、目にも止まらぬ太刀筋で、またたく間に二人を力任せに薙ぎ払う。

ゴギャッァァァ!ボギッメリメリメリメリッ!

その瞬間、力任せに振られた大剣に巻き込まれウィザード、アーチャーの身体はくの字に曲がりへし折れた。見るに耐えない死体へと変わっていた。むしろ、そのひしゃげた姿は熱帯の大きな花の濡れた花弁のようで美しかったのかも知れない。しかし、ツヴェルフがニの大刀を振るおうと構えたところで反撃は終わった。大剣を力無く落とし、その場に崩れ落ちた。ラストワンの呪いが、非情にも彼女の心臓を止めていたのである。
作品名:リスティア異聞録 2章 作家名:t_ishida