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リスティア異聞録 2章

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アヴァロンに奇妙な男が居た。その男はローブを着て、フードを目深にかぶっていた。この男が騎士団長だと名乗ったところで誰も信じてはくれないだろう。良いところ魔術師か占星術師といったところだ。しかし、城の衛兵は違った。衛兵は男の姿を認めると、男が名乗るより前に敬礼をした。

「ライオット騎士団長殿 叙任でございますね!聞いております、どうぞお通りください」

このローブの男、数々の戦場を恐怖のドン底に叩きおとしたヌル隊を擁するライオットの騎士団長である。その後も戦果報告や、ミューズ女王に呼ばれて作戦会議に参加するために城を訪れる機会が増えたために顔を覚えられたようである。

「ああ、さすがに顔を覚えてもらえたみたいだねぇ」

ローブの男はおかしそうに呟く。衛兵は男の後ろについて歩く二人の戦乙女と二人の聖職者の姿を見て妙な感覚に襲われた。ヌルとよく似ている。だが根本的に何かが違う。あの壊れた人形のような禍々しさは感じられない。先頭を歩く赤い服の戦乙女、彼女からヌルと対極の危うさを感じる。少女特有の真っ直ぐ過ぎて危うい光を帯びた目。その目で微笑みかけられた衛兵はその目を直視することが出来ずに目を逸らしたのだった。

謁見の間に着くとミューズがケバケバしい玉座に座っていた。

「予想通りの時刻ね。ツヴェルフ、前へ」

ミューズが悠然と立ち上がるとツヴェルフはミューズの前に跪く。ミューズは叙任儀式用の剣を抜こうとして手を止めてツヴェルフに問う。ツヴェルフの持つ強い魔力を感じとって怪訝に思ったようだ。

「ツヴェルフ、12という意味だったかしら? ライオットでは魔力の無い戦乙女が番号で呼ばれるのでしたね。しかし、貴女はとても強い魔力を持っているように見えますが、騎士としての名前を与えられなかったのですか?」

ツヴェルフが表情も変えずに答える。

「一度、機会はあったのですが断りました。戦争が終ったら頂戴しようと考えています。それまでは、ツヴェルフで良いのです。魔力が有ろうと無かろうと国を守ろうとする願いに変わりは無い。そして、その願いはどれも等しく尊い。その等しい位置から国を支える力でありたいので名前はツヴェルフで良いのです。そして、だからこそ過酷であることで有名なライオットで騎士の士官をしたのです」

「なるほど…… まあ良いでしょう……」

ミューズはツヴェルフの中に有る強い想いについては触れないことにした。彼女の中の問題意識。それに起因する現実は確かに存在している。程度の問題では有るのだけれども。現状、誰も強く問題にはしていない問題。しかし、彼女はその病巣の存在が許せないのだ。しかし、この魔法崇拝、魔力信仰が彼女の願うように無くなったとしても、また別の差別が生まれるだけである。男女差別、人種差別、下手すると髪の色差別などという馬鹿馬鹿しいものなのかも知れない。人間は誰しも誰かより優位で居たい、誰かより自分が優れていると思いたい。それが「違い」という最も安易な着目点から発生する。それが恐れとして認識された場合は媚び、恐れる必要が無いと認識された場合は差別という行動に出る。人間が猿から進化したという証拠としては姿形以上に、この猿山を愛する心の方が有力であろう。ならば、この問題への対処としては既存の差別意識を残したまま、程度を極力小さくしていくことで問題を最小限に抑え込むというのが最適解なのだ。これが政治というものである。国が人間の集りである以上、理想を叶えることは出来ない。彼女の見ている世界の理想、それに対立する誰かの理想、その理想は共に尊いものであるからだ。国はそれらの理想をそれぞれ妥協させた結果、安定した場所においてのみ成り立つのだ。しかし、この危うい程に真っ直ぐな目をした少女にそれを伝えたところで何にもならないだろう。

「ライオットのツヴェルフよ。アヴァロンの女王は貴方を新たな騎士として任命します。このリスティアを平定するため今後も良き成果を上げることを期待しています。」

ここに騎士「ツヴェルフ」が誕生した。
同様にして4人分の叙任が終わり、正式にライオットの部隊としてツヴェルフ隊が配属されることになった。ここにアヴァロン第二次東征戦線において精強なログレス部隊から「赤い死神」と恐れられた「ツヴェルフ隊」が誕生する。

作品名:リスティア異聞録 2章 作家名:t_ishida