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【ジュダジャ】あの時の答えを今、言うよ【シンジャ】

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 こっちはただ、こいつがしっかり者に見えて思いの外に天然の気がある事を夢で見て知っていたから、万が一書類をぶちまけられたら面倒な事になると思って手を貸してやっただけだ。良い所を見せたかったわけでも、優しさをアピールしたかったわけでもない。俺はいつだって俺の為にしか動かない。それなのにこいつは何を勘違いしているのだろうと腹立たしく思ったけれど、さすがに夢云々の話を持ち出すのは憚られたので、不満の思念を吐き出す術は無かった。
「ありがとう。助かりました」
 自由になった指先を口元に当ててクスクスと控えめに笑われ、益々虫の居所が悪くなる。不愉快な気持ちになっていたので、その辺の開いているテーブルにドサリと書類の束を落として不貞腐れた。
「礼なんかいらねぇつーか、どうせなら言葉よりも態度で示せよ。俺、喉かわいてんだけど」
「ああ、それは気が利かずに失礼しました。コーヒーでいいですか?」
「もらう。でも砂糖とミルクなければいらねぇ」
「ありますよ。ちょっと待ってて下さいね」
 パタパタと白衣の裾を翻して奥のスペースに姿を消していくのを見送って、あれ、何してんだ俺と不意に我に返った。
 夢の中では互いに敵対している勢力に分かれ合い、「貴様」だの「ザコ」だのと呼び合って骨肉の争いを繰り広げていたというのに、現実では呑気に茶なんかしようとしている。ギャップの大きさを思うと笑えるけれど、だからこそ気兼ねなく話せる今の雰囲気が少しだけこそばゆく、面白かった。
「アンタ、一人でここ使ってんのかよ。他の奴は?」
「今は私一人ですよ。あ、ポッキー食べます?」
「食うっ」
 砂糖とミルクをたっぷり落として甘ったるくなったコーヒーに、非常食としてストックしているらしい苺のポッキーとコンソメパンチのポテチがトレイに乗って出てきた。普通のポッキーではなく苺ポッキーだった事で俄然テンションが上がり、なんだよコイツやるじゃねぇかと勝手に好みの一致を内心で褒め称える。
 出された菓子を遠慮なく口に放り込みながら、でも本命は期間限定発売だった桃味のポッキーだとか、ポテチのメーカーはこれじゃないと許せないとか、さして面白くも無い下らないネタばかりをずっと喋り続けていた。
「ファンタもさぁ、ピーチを復活させればいいと思わねぇ? あれすげぇ好きだったのに」
「分かる。炭酸は苦手だけどあれは飲みやすかったかも」
「だろォ?」
「というか、きみは単に桃味が好きなだけだろ」
 柔らかい物腰をしている癖に結構ズバズバと容赦なくツッコミを入れてくる。打てば響く岩のような手応えが小気味良くて、次々と洪水のように取り留めのない話ばかりが溢れて止まらなくなる。ほんの些細な切欠でスイッチが入ったみたいに、体内の波長がカチリと噛みあった気分だった。
「アンタさぁ、思ったより話せる奴だったんだな」
「え?」
「いーや、なんでもねぇよ。こっちの話」
 夢の中でも、もっと早くこうして話してみれば良かったのにと思いつつ、いや状況が違うだろと冷静に思考え直した。戦争も魔法も無い安寧な世界で出会ったからこそ、こうやって平和な対面が出来たのだろう。それを抜きにしても、次元を越えて再会したのに違和感が無いなんて、もしかして俺達ってすげぇんじゃねーの? なんて思った。育って来た時代や環境が変わっても、根源にあるものは変わらない。笑えるポイントは、たぶん同じ。
 この出会いは多分、偶然なんかじゃない。
 ジェットコースターに乗る前のワクワクするような昂ぶる気持ちで、そんな風に直感していた。