淡い花弁の行末に殉じて
離れた距離を小走りで詰め、真っ直ぐに前を見据えている兄の横顔をそっと見あげた。先ほどまでの切り詰めた静寂は薄らいでいて、精緻な輪郭がルキアを連れ歩くことに些かの迷いもないことに悟られぬほどに安堵し、湧き上がる喜悦を飲み込んだ。
向き直った前方にルキアはきっと兄と同じものを見ることはないだろう。それでもルキアの心を満たすのは、一片の曇りもない誇らしさだった。
兄に望まれる限り、兄の歩む道に寄り添って生きていこうという決意は、傍らを過ぎ去る淡い花びらのようにさりげなく密やかに成されたのである。
作品名:淡い花弁の行末に殉じて 作家名:ao