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僕は君の前ではどうしようもなく愚かになるの

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「明日、暇だったらプールに行かないか?」
南沢が三国にそう誘われたのは、夏の期末試験期間中でいつもより少し早い放課後の帰り道だった。
「明日で期末試験も終わって部活もないし、勉強を終えた羽のばしにさ。ちょうど母さんが仕事先の人からタダ券もらったんだよ。どうだ?」
「タダなら悪くはないな」
南沢の返事は素っ気ないものだったが、三国は気にもとめなかった。
「じゃあ、決まりだな。明日学校終わったらそのまま直行するから、サッカー棟前で待ち合わせな」
そこでちょうど別れ道にたどり着き、軽く手を振って南沢と三国は別れた。
(……そういえば、あいつから誘われるなんて初めてだな)
ひとりの帰り道、南沢はふと気づいた。
二人が付き合いはじめて半年ほどになったが、いつもデートに誘うのは南沢からだった。しかしデートと言っても、二人でスポーツショップや服屋で買い物をしたり、ゲームセンターへ行くくらいのものだった。
(デートらしいデートなんて初めてだな……)
素直に認めるのは癪だったが、南沢はすこし嬉しかった。


次の日。サッカー棟の前に着いた南沢は眉間に皺を寄せた。
「お、南沢来たか」
「よー、南沢」
「先輩、お疲れさまです」
「ちゃーす」
待ち人の三国以外にも、天城や車田をはじめ、倉間、速水、浜野、神童、霧野がいたからである。
「……皆、集まってなにしてんだ?」
「なにって、三国がプールに誘ってくれたど」
天城の返事に南沢は眉間の皺を更に深くして、三国をにらんだ。しかし三国はその視線に気づくことはなく、とても楽しそうに説明した。
「チケットたくさんもらってさ。こういうのは皆で行ったほうが楽しいだろ。じゃ、全員そろったから出発するぞ」
先陣をきる三国の後にメンバーが続く。皆の後ろ姿を見ながら、南沢は露骨にため息を吐いた。