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僕は君の前ではどうしようもなく愚かになるの

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三国はなにひとつ悪くはないのだ。今日のことはすべて南沢が勝手に勘違いして浮かれていただけのことだった。
「いやでも、俺が昨日ちゃんと説明してれば良かったことだし……だから、本当に悪かった」
しかしどこまでもお人好しの三国は引き下がらなかった。
南沢は自分の腕を掴む大きな手から熱を感じた。すこしでも気を許したら浮かれてしまいそうなほどに熱い。
(ああ、本当に)
(お前も俺も、大概だな)
南沢は一息ついて、三国の顔面の右手の指を二本立てた。
「帰りにハーゲンでダブル奢ってくれたら今日のことはなしにしてやる」
南沢の提案に、三国はすこし怯んだ。
「え、でも俺今月の小遣いちょっと厳しくて……」
「そんなの知るかよ」
南沢は今更もう体裁を取り繕うのが馬鹿馬鹿しくなっていた。そもそも三国の前で自分を保つなんてことはきっとできやしなかったのかもしれない。
三国は頭を抱えて南沢への返事を渋っていた。しばらくして、意を決して南沢の顔に右手の人差し指を立てて突きつける。
「二五メートル勝負して、お前が買ったらダブル、負けたらシングルってのはどうだ?」
南沢は三国の提案にすこしだけ思案して、その人差し指を掴んだ。
「仕方ねぇな。それで乗ってやるよ」
三国は命拾いしたと言わんばかりに一息ついて、「負けないからな」と不敵な笑みを浮かべた。南沢も負けじと、「なめんなよ」と笑った。
競泳用のプールへ向かう道すがら、南沢は自分が勝負のことを本当はどうでもいいと思っていると感じていた。
(きっと俺たちは、これからもこうなんだろうな)
ささいなことですれ違ったり、苛立ったり、気づいたり気づかなかったり。
(みっともねぇのはダサくて嫌だけど)
三国の前になると、自分が制御できなくなる。知らない自分の顔が出てきて、戸惑い、どうしたらよいのかわからなくなる。
(つまり、それは、)
そういうことなのだろうと、南沢は心のなかで静かに一人ごちた。