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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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話し合ってみようside:B

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―――――だから自分はイヤだったのだ。
目の前には、非常におっかない顔でこちらを睨みつける黒髪の男。
無愛想なだけならず、不機嫌を隠しもしない剣呑な空気にげんなりする。
大量の書類を乗せたローテーブルを挟んで、サワダツナヨシは深々とため息をついた。
こうなることはわかりきっていたのに。
なんで、オレがこんな目に・・・


 話しあってみよう -Let’s talk to each other / side:大空-


事のはじめは、数日前ボンゴレファミリー総本部で行われた幹部会での出来事である。
歴史と伝統、格式を見事に体現した豪華でいて重厚な会議室には、ズラリとダークスーツの男達が居並んでいた。一目でその筋とわかる男達である。
その中に一人、他と比べて一段と小柄な人影。茶色の髪に白い肌、琥珀色の瞳、華奢な体をダークスーツに包んで、精一杯威厳だとか、風格だとかを醸し出そうとしているが、悲惨なことにかえって一層幼さを強調する結果になっている。
だがこの小柄な人物こそが、天下のボンゴレファミリー十代目ボス、ボンゴレ・デーチモこと、サワダツナヨシである。
いかに、中学生に間違われるほどの童顔(それはもう呪われているとしか言いようがないが)であろうとも、ふにゃりとした雰囲気に威厳がなかろうとも、彼こそが大空のボンゴレリング継承者であり、イタリアマフィア界に多大なる影響力を持つボンゴレファミリーのトップなのだ。
しかし、十代目を継承したといっても、全てがツナヨシの思うままに動くワケではない。
当然、ツナヨシを補佐する幹部連中がいるわけで。
先代からの古株にお目付役、幹部会に出席する面々はどれもクセ者揃いだ。加えて、各部署間の長年にわたる軋轢や確執、予算の奪い合い、などなど。それら諸々の事情に挟まれて、ツナヨシはボンゴレという大型船の舵取りをしているのである。
どこまでも平行線をたどる議題に、チクチクとねちこい攻撃、巧妙な腹の探り合いに、搦め手、脅迫、その他諸々の攻防戦(あれこれ)。
うんざりとしたツナヨシは、こっそりと吐き捨てた。
(は!ボス業なんぞ、クソくらえだ)
―――――常々ツナヨシはそう思っている。

そうして、今日も今日とて会議は難航する。
先代からの古株の一人がボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーにクレームをつけはじめたのだ。
ヴァリアーの立ち位置は、ボンゴレにおいても非常に微妙である。
ボンゴレにありながらも、あくまで『独立』を主張する暗殺部隊。九代目の実子ながら、十代目継承のおりにはツナヨシに反旗を翻した過去。
その隊長であるザンザスの顔には、まさしく『反乱の証』が刻まれているわけで。ボンゴレ内でも彼らヴァリアーに対する視線は批判的なものが多い。
現状においては、ボスであるツナヨシが表面上特にこだわりも見せず、彼らに仕事をまわしてもいるので、なんだかんだと黙認されている所があるが、しかしこうした場、会議や予算分配の場面において、チクチクと槍玉にあがってくるのである。
―――――要するに内に火種を抱えているようなものだ。

あれこれと続く幹部の報告を半ば聞き流しながら、ツナヨシがその当事者である男へ視線をむけると、彼は長い足を組んで、豪奢な椅子にふんぞり返るようにして座っている。
ツナヨシなどは椅子に半分埋まっている(だいたいにしてサイズがあっていないのだ)というのに。
――――それがまた、えらく様になっているからムカつく。
加えてその馬鹿にしきった態度。うぜぇ、面倒だと、隠しもせず顔中にデカデカと書いてある。
「くぁっ」
オマケにぬけぬけと大きなあくびをすると、さっさと目を閉じ睡眠モードだ。まったくもって、ふてぶてしい。まだ、しおらしく控えていようものなら可愛げ(?)もあるが、ザンザスの明らかな挑発に古参の幹部の血圧は跳ね上がった。
「なっ、貴様聞いているのかっ!」
憤る幹部に対してザンザスは、相変わらず眼を閉じて威嚇の怒声もきれいにスルー。ごついおっさんの苛烈な威圧感(子どもには決して見せてはいけないご面相だ)を受けても、蚊に刺されたほどにも感じていない。
ピリピリと殺気が肌に突き刺さる。一触即発の雰囲気に室内の空気は研ぎ澄まされて、幹部の殺気に呼応するかように、他の面々もそれぞれ戦闘態勢を整えていたりして。
(・・・まったく)
はぁ、とため息をつくと、しぶしぶながらもツナヨシは仲裁に入った。爆発するまえに消火してしまわねば、巡り巡ってツナヨシに余計な仕事が増えるだけだ。
「落ちついて下さい、ミスター・ジレッティ。ザンザスも、その態度を改めろ」
ツナヨシの叱責にザンザスは薄目を開けて鼻で嗤うが、とりあえず話を聞くそぶりはみせた。
「わかりました、要するにヴァリアーの経費について不明瞭な点がいくつか見受けられる、と。そういうことですね?」
「ええ、そうです」
「ふん、くだらねぇ」
「ザンザス」
相変わらずのふてぶてしい態度に、ツナヨシは心の中で頭を抱える。
(ホントにコイツは。めずらしく会議に出てきたと思ったら)
基本的にぐうたら昼寝男のザンザスは会議、ミーティング、パーティー、式典など、人が集まる場(というより、暴れられる場面以外はすべてといった方が正確だが)は、ことごとくサボりの常習犯だ。
それを説得(まあ時には脅迫も)し、逃走経路をつぶし、連行要員を確保するなど、けっこうな根回しをして、やっと捕獲、出席させたと思えばこのザマだ。
欠席すれば『背反の兆しアリ』といらぬ警戒を抱かせるし、顔を出したら出したで、この態度で空気を破壊する。まったく、どうしろというのか。
だからツナヨシは心の底から痛感する。
――――ボス業などやってられるかっ!と

けれどまあ、この場をおさめない限り自分に安息はない訳で。居並ぶ面々もこの事態をツナヨシがどう収めるのか、愉しんでいるふしがある。
まずはお手並み拝見という所なのだろう。
(ああもう、なんでオレがこんなこと・・・)
呪っても、嘆いても始まらない。しぶしぶとツナヨシは妥協点を提示した。
「わかりました。確かにヴァリアーの経費が大きいことはたびたび耳にします。ですから、ここは一度実態を明らかにするためにも、一斉監査を行うというのは如何でしょう?」
「一斉監査、ですか?」
「ええ。現在、各部署から予算の消化について報告書を提示していただいていますが、中には具体性に欠ける文面も多くありません、ですから本部から実際に人を送ってヴァリアーのみならず、すべての部署の実態を把握するのが妥当かと。
いかかでしょう?であれば、今後の予算計画についてもより現状にあった予算配分を議論できますし」
「いや、それはしかし・・・・」
「もちろん、オレとしてもみなさんからの報告書には信頼を置いています。大切な家族(ファミリー)ですから」
そう言ってニッコリと笑うツナヨシに、ざわざわと会場がざわめいた。
(ちょうどいい。こうなったら一度シメてしまおう)
くだらぬ一方的な吊し上げに、腹の底でツナヨシはぶち切れていた。