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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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ボンゴレは表だっては複合企業を名乗る巨大組織である。そのトップにいるとはいえ、長年それぞれに部署を運営してきた幹部たちは、本部の介入を嫌う。特にここ数代はそれが顕著で、一部ではボンゴレボスも知らなかった兵器の研究開発が行われていたほどだ。
九代目も各部署の独立性、機密性には頭を悩ませていた。
各部署からの要求や報告はボスのもとへ随時あがってくるが、それが実態とは言い難い。これ以上の暴走や秘密裏の計画を防ぐためにも、各部署の内情はツナヨシが把握しておくべき課題だった。今回のヴァリアーへの嫌疑はちょうどいい口実になる。
落とし所としては悪くないだろう。
「ザンザスも異論はないな?」
いらぬ詮索、干渉を最小限にとどめるためにも、監査は受け入れろと、そう暗に含んだ視線を送れば、ザンザスも非常に不満気ながら首肯する。
「・・・いいでしょう、わかりました。けれど、監査を行うにあたっては公正かつ実力を併せ持つ人物を送っていただきたい」
「というと?」
「送った人物が突如失踪など、まあ、ないでしょうが。ある程度の実力がなければこういった仕事は難しいかと・・・」
なるほど、それはまあ確かに。さすがは同業者。よく思考を読んでらっしゃる。
「ではミスター・ジレッティには、適任者に心当たりがあると?」
「ええ、ドン・ボンゴレ・・・ここはあなたにお願いしたい。あなたほどの実力者ならば脅しに屈するという事態もないでしょうし、ファミリーのトップであるあなたを我々も信頼していますから」
「・・・・はぃぃい?!」

こうして、ツナヨシがヴァリアーの監査に赴くことになったのである。
―――――まったくもって、非常に不本意だ。



      ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


そして、現状に至るわけだ。
相変わらず、目の前には不機嫌で退屈そうな顔。
(・・・ムカつく。だいだい、なんでオレがこんな苦労しなきゃなんないんだよ。元はといえば、この男がすべての元凶なのに)
ジト目で睨み付けるが、暗殺部隊の隊長サマは苦もなくスルーだ。
なおも、恨みがましい視線を向けていると横合いから叱責の声がとんできた。
「ツナヨシ、ちゃんと聞いているのかい?!」
「あ、ごめん。マーモン」
ツナヨシの右手、そのソファには、大量のファイルを前にちょこんと座るマーモンと、じっとりと何とも形容しがたい恨みがましい目つきでツナヨシを睨み続けるレヴィの姿があった。
経費について、ザンザスに質問するほど空しいことはなく。また、ヴァリアーサイドも彼らのボスに答えられるとはハナから思ってはいないようで、監査の場にはヴァリアーの出納係・マーモンと、実際に細々としたやりとりを取り仕切っているレヴィが出席していた。というか、主にこの二人によって、財務状況の説明がなされていたのである。
「まったく、キミは・・・」
「悪かったよ。集中する。だから、さっさと済まそう」
ふう、とため息をひとつつくと、ツナヨシは意識をきりかえて、書類に目を向ける。どっさりと机に積まれたファイル類に、内心うんざりしながらもパラパラとめくっていく。
――――どうせ形だけの監査なのだ。
ならばさっさと済ましてしまうに限る。

だいだいにして、ヴァリアーの経費が大きいことは今にはじまった問題ではない。
彼らは『死』を体現する暗殺部隊であり、ボンゴレファミリーの『最大の恐怖』である。
ひいては存在するだけで、他を抑制する存在なのだ。
任務の難易度、遂行率、存在理由、そのどれをとっても非常に意味のある部隊なのである。
いくらザンザス個人に対して、「やたらと物を壊すな」だとか「めんどくせぇで仕事を無視するな」などといった文句も、不満も、小言も山ほどあろうとも、隊長としてのこの男の指揮能力には疑問を挟む余地もない。
味方の犠牲はほぼゼロ(一部、同士討ち的な被害はあるが・・・)。一般人への被害もゼロ。敵対勢力に対しては、目を覆いたくなるほどの苛烈で徹底的な有様だが、見せしめの役割を考えれば、それも過剰とは言い難い。
半分ぐらいは、怒りの発散だったり、暴れたいだけであったり、八つ当たりでぶっ壊している節があろうとも、彼の指揮能力の高さは結果が証明している。
ザンザスの指揮能力に加えて、ヴァリアークオリティーを支えるためには数々の人材、設備は言うに及ばず、武器、情報とあらゆるものに金がかかる。
要するにどこをとっても、経費節減などできない、金喰い部隊なのである。
つまりは、ツナヨシがいかに効率的に仕事をまわすか、が問われるのだ。
それに今回の監査も、スタンドプレーの多いヴァリアーに対する嫌がらせの色合いが濃い。これでいらぬ情報規制だったり、なんやかんやと他の部署があおりを喰っていることもたびたびあるので、日頃の鬱憤晴らしも兼ねているのだろう。
ただでさえ過密なスケジュールの合間をぬって監査をするハメになったツナヨシにしてみれば、「お前らいい加減にしろ」と怒鳴りたいくらいだ。
そんな、あれこれの裏事情を抱えつつも、結局は自らが監査を行い、それを報告書にまとめ、ヴァリアーへの疑惑の念を払拭するのがツナヨシの仕事である。
―――――ハズだったのだが。

「なぁ、これ何?」
机上に山と積まれた資料にざっくりと目を通していくツナヨシだったが、その手がピタリと止まった。
どれどれとマーモンがツナヨシの手元をのぞきこんでみれば、項目は『飲食関連費』とある。そこには、発注した食材のリストと金額が記されているのだが、そのケタ数が明らかに、なんというか、アリエナイ金額なのである。
「ああ、それはボスのお酒と・・・」
「酒?!おまっ、酒でこんな金額なるなんて、どう考えてもおかしいだろう!」
「だって、そりゃ各地のプレミア物だし。それに空輸したから、その費用も含まれてるんだろうね」
「空輸?!プレミア物?!・・・ちなみに、一体何を?」
「えっと、スコッチにブランデー、ウィスキーにウォッカ、あとは、ワインに地ビール。あ。それから、肉もだね。和牛サーロインに、最高級のフィレ、ロース、ラムと・・・」
――――ぶちっ。
「認められるかっぁああああ!!」
「ふん、安酒は口にあわねぇ」
「なんでオレが粗食で、お前は酒と肉!!しかもこんないい物ばっか飲み喰いしてんの!!」
確かにある程度は飲食物を経費で落とすことを認めている。だが、目の飛び出るほどの金額にツナヨシは一気に炎上した。ふるふると書類を握りしめる手が震えている。
「こうなったら、徹底的にチェックするからな!!」
「は、貧乏くせぇ」
―――――ドゴン!
ツナヨシの拳が炸裂。テーブルは真っ二つに砕け、大量の書類が床になだれ落ちた。
殉職したテーブルの巻き添えを喰らって、木材を顔面で受けたレヴィは床に撃沈。マーモンは素早く避難していたりする。
「あはは。なんだって?よく聞こえなかったな。もう一度言ってみて?」
にこやかな笑顔で問い返すツナヨシだが、その眼はまったく笑ってない。
「ふん、うぜえぇ。たかがこれっぽっちでガタガタ言うな」
――――ブチッ!
その舐めきった態度も、麻痺しまくった金銭感覚にも、ツナヨシの我慢は限界だ。
(や、やってられるかぁぁああ!!)