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僕の可愛い人ですから

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雪男がシュラの顔のほうに手をやった。
ふっくらとした頬に、そっと触れてくる。
あ。
キスするつもりだ。
そう感じ取った。
今ここには自分たち以外はだれもいない。
だから、問題ないだろう。
もう親密な距離まで、顔が寄せられている。
シュラはまぶたを閉じた。
唇を重ねる。
そのやわらかさと体温を心地良く感じ、自分の体温が上昇するのも感じる。
雪男の身体に手をやって、深いキスをしようとした。
けれども。
携帯電話の呼び出し音が聞こえてきた。
シュラのコートのポケットの中で鳴っている。
雰囲気、ぶち壊しだ。
シュラは雪男から離れた。
雪男はがっくりと肩を落としている。わかりやすく落ちこんでいる。
なんだか申し訳ないような気がしたが、シュラは鳴り続けている携帯電話を取りだして通話を始めた。
「ハイ。……ハイ。……あー、わかりました。今からそっちに向かいマース」
そう告げると、電話を切った。
視線を感じる。
雪男が見ている。少し堅い表情。電話の内容を気にしている様子だ。
シュラは口を開く。
「ヴァチカンからだ」
「!」
雪男の表情が厳しいものに変わる。
「ヴァチカンが一体なにを言ってきたんですか?」
「すぐにこっちに来いってさ。ただそれだけで、理由は言わなかったな」
「急に呼びつけるなんて、重大なことに決まってる」
「さあね。もしかしたらヒマつぶしかもしれねーぞ?」
そう返事しながら、十中八九どころかほぼ百パーセントそれはないとシュラは思った。
どうせロクでもない用件だ。
しかし、深刻な顔をしている雪男にそれは言いたくなかった。
「まあ、なんにしろ、さっさと済ませて帰ってくるさ」
シュラは携帯電話をコートのポケットにもどした。
さて、向こうでなにを言われるのか、なにをさせられるのか。
なにも恐くない。なんてことは、ない。傷を負えば、痛みを感じる。ただ、ひどい痛みにも耐えたことがあるので、次も耐えられるだろうと思うだけだ。痛みを恐れる気持ちがまったくないわけではない。
だが、それでも戦う。
そういうふうに自分は生まれついてしまっているのだから。
作品名:僕の可愛い人ですから 作家名:hujio