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僕の可愛い人ですから

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検査。
なんの検査なのか雪男は言わなかったが、シュラはすぐに察した。
雪男は毎日、実の父親であるサタンの血があらわれていないかの検査を受けているのだ。

ふいに、思い出した。
シュラの頭に五年まえに見た光景がよみがえってきた。
あのとき、ちょっと遊ぼうと思ってトレーニングルームに行った。
トレーニングルームには、ひとり、先客がいた。
メガネをかけた小学生ぐらいの少年。
シュラから見れば、全体的に小さくて、その腕は細かった。
少年の手には拳銃があった。
けれども、その銃口は下を向いていた。
少年も下を向いていた。うなだれていた。落ちこんでいる様子だった。
シュラはその少年がだれか知っていた。獅郎がつれているのを見かけたことがあった。
あの少年は獅郎が後見人として育てている双子の弟のほう、奥村雪男だ。
獅郎から雪男について聞いたこともあった。
頭が良くて勉強はよくできるが、身体が弱く、気も弱く、恐がりなところもあって、泣き虫だ。
そう獅郎は笑顔で話していた。嬉しそうな、優しい表情をしていた。
まるで父親のような顔をしていた。
だが、それは違う。
雪男と燐の父親はサタンだ。
ヴァチカンには獅郎がサタンの仔を調伏したと報告していたが、ひそかに獅郎が双子を育てていたのだ。
正十字騎士團日本支部の秘密中の秘密。
知っているのは、ほんの一握り。
その一握りにシュラも含まれていた。
しかし、あのころは、まだ、シュラは燐がサタンの炎が受け継いだことを知らなかった。
ただ、サタンの仔である双子を獅郎がこっそり育てていると思っていた。
トレーニングルームに入ったばかりのところから、シュラは小学生の雪男を観察した。
おそらく、拳銃を扱う練習をしていて、うまくいかなかったのだろう。
落ちこんでいるその姿は、獅郎が言っていたように、気が弱そうに見えた。
……しかし、あの少年は毎日検査を受けている。
常人のままか、悪魔の血が目覚めてはいないかの検査を、雪男が毎日受けていることも、シュラは知っていた。
知ってはいたが、それは当然のことだろうとしか受け止めていなかった。
でも。
毎日、常人であるかどうかの検査を受けるというのは、どんな気分なのだろうか。
シュラは気になった。
恐がりの少年が、毎日、自分がサタンの息子であるという事実と向き合わされ、悪魔になっていないかどうかを調べられているのだ。
想像した。
いつのまにか足が動いていた。
雪男が顔をあげて、シュラのほうを向いた。だれかが近づいてくるのに気づいたらしい。
そんな雪男にシュラは笑って見せた。
『よー、メガネ、アタシと勝負してくれ』

あのころは幼くて小さかった雪男が今はシュラよりも身体が大きくなって隣に座っている。
雪男はシュラをじっと見ている。
その口が開かれる。
「シュラさん」
真剣な表情をしている。
「シュラさんは、僕が恐くないですか?」
作品名:僕の可愛い人ですから 作家名:hujio