僕の可愛い人ですから
その射抜こうとするかのような強い眼差しを見て、シュラは気づく。
恐がっているのは雪男本人だ。
自分が悪魔になってしまうことを恐れているのだろう。
だから。
シュラは笑う。
「にゃっはっはっは! アタシがおまえを恐がる? なに、おかしなこと言ってんだ」
手を伸ばし、雪男の肩をバシバシと叩いた。
「そんなの、ありえねーなあ、ビビリメガネ君」
「……そうやって、また、子供扱いする!」
雪男は不満そうな表情を顔に浮かべている。
だが、真剣すぎるほど真剣な、思い詰めているような顔をしているより、よっぽどいい。
そうシュラが思ったとき。
雪男が自分の肩にあるシュラの手をつかんだ。
ジロッとシュラをにらむように見て、雪男は言う。
「いつか、きっと、絶対、あなたに僕のことが好きだと言わせますから」
強い口調だった。
次の瞬間、また、シュラは笑った。
「へ〜、そんな日が来るのかにゃ〜?」
「来ます」
そう断言すると、雪男は身を近づけてきた。
寄せられてきた唇をシュラは受け止めた。
窓が鳴っている。
外では、まだ吹雪いているのだろう。
しかし、たくさん雪が降ったあとには春が来るのだ。
作品名:僕の可愛い人ですから 作家名:hujio