二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ハロウィンの話

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 



「アンディ、いるんだろー?」
 ウォルターはノックもせずにいきなり部屋の扉を開け、中に踏み込みながら言う。
「トリック・オア・トリート!」
 言ってニマニマとする。
 どうせアンディがお菓子を持っているはずがないのだ。
 ベッドの上で、きょとんと大きく目を見開いてウォルターを見ていたアンディが、側に置いてあった『何か』を持って、トコトコとウォルターのところに来る。
「はい、コレ」
 差し出した手にポトンと落とされたのは、激マズキャンディの箱。
「コレって……」
 ウォルターは呆然としてじっとそれを凝視する。
 持っていたことも驚きだが、よりにもよってコレ……。
 アンディがほうっと安堵のものらしいため息を吐く。
「ジョゼフに押しつけられたんだよね。ボクはいらないからウォルターもらってよ。あと、コレも一応お菓子だから、いたずらは無しね。じゃあ、早く部屋出てってよ」
 素っ気なく言ってベッドに戻ろうとするアンディの肩を、ぐいっとウォルターはつかんで引き寄せる。
「おい、アンディ。ちょっと『トリック・オア・トリート』って言ってみ?」
「え、なんで……」
「い・い・か・ら!」
 疑問を浮かべる顔にずずいと真顔を近付けて強く言う。すると、その迫力にか……ウォルター自身は気付かないもののかなり必死の形相……アンディがぼそっと言った。
「トリックオアトリート」
 そして肩の手を振りほどき、またベッドに戻ろうとする。
「もういいでしょ。ボクはお菓子もいらないし、いたずらだってしないよ」
「待て、アンディ!」
 その腕をつかんで止めて、ウォルターはキャンディの箱を掲げて見せた。
「おまえ、トリックオアトリートって言ったよな? はい、コレ」
 今渡されたばかりのキャンディの箱をアンディの手に押し付ける。
 『げっ』とアンディの顔が引きつった。
「……そういうものじゃないでしょ!?」
 ウォルターの手を振りほどき、くってかかるアンディに、ウォルターはニヤニヤする。
「おまえがこんなモン俺に押し付けるからだろ」
「そっちがお菓子せがみに来たんじゃん」
「俺はいたずらしようと思って来たんだぞ」
「それが威張って言うこと?」
 えへんと胸を張るウォルターに、あきれ返ってアンディが言う。
「もういいから、そのキャンディ持って帰ってよ」
「いらねぇよ。ってか、アンディ。一応俺に『トリックオアトリート』って言ったんだからな。このキャンディはおまえの!」
「いらないよ。ウォルターが先に言ったんじゃないか」
「そう! おまえは後に言ったんだからな。だから、これはおまえの!!」
「そんなっ……」
「おまえのっ!」
「ボクのじゃないっ!」
「おまえのっ!!」
「いらないってばっ!!」
 ぐいーっとキャンディの箱を胸に押し付ける。
 アンディがそれをぐいーっと押し返してくる。
 ふたりの間をキャンディの箱が行き来した。
 それはそれは激しい攻防で、お互いが息切れするまで、そのやりとりは続いた。
 ふたりの間に、ポトンと箱が床に落ちる。
「……だいたい、ウォルターは何しに来たんだよ」


作品名:ハロウィンの話 作家名:野村弥広