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兎の餅つき

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確かに、辺りは閑散としていて人気が無かった。
「しかし…今はお前で良かったと思っているぞ、人の子」
子供が浮かべるような純粋無垢、穢れない可愛らしい笑顔を向けられ夏目は慣れていない様子で頬を掻いた。
「…そうか」



それから夏目達は、他愛もない話をした。餅の作り方。餅米はどれくらい突けば餅になるのか。先生が狸に間違われないようにするにはどうすれば良いか。時には笑い、涙を流し。楽しい時間は走るように流れていく。
「そういえば人の子、いや…我の数少ない友人よ」
ふと、夏目は振り返る。男の子は微笑を浮かべていた。まるで、何かに満足したように。
「名を、聞いても良いか」
「夏目、夏目だ」
二回繰り返して云った。忘れてほしくない。そう思ったからだ。
「夏目か…良い名だ」
男の子は事が足りたように満足気に笑う。
「我が友、夏目よ。我は忘れぬ。貴様の事を」
一陣の、強い風が吹いた。
「うわっ!」
慌てて目を瞑る。風が収まったのか静かになったのを見計らってゆっくりと瞼を上げた。
其処には既に、男の子は居なかった。
「…兎?」
思わず辺りを見渡すが、それらしき姿は何処にも無い。隣に鎮座していた先生に詰め寄る。
「なぁニャンコ先生、兎は?」
「ほれ、あれを見ろ」
先生が視線を向けていた先は空。先程まで煌々と輝いていた月は、何時の間にやら雲に隠れていた。
「奴は月の住人だ。月が見えている間だけだろう、此方に来れるのは」
少しばかり、そう語る先生の顔には寂しさがあったように見えた。
「兎、旨い餅が作れるかな」
「大丈夫だろう」
人間との触れ合いが、人間の温かみが、兎は恋しかったのかもしれない。
「…先生、次の満月は何時だっけ」
次は餅を突こう。一緒に突いて、酒も先生と飲もう。思い出と一緒に、美味しい餅を作ろう。
お前の、故郷を見ながら。


作品名:兎の餅つき 作家名:男子生徒A